表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
条件が揃わないと最強になれない男は、保育士になりたかった!  作者: 鉄火市
33章:実習生、予知を覆そうと躍起になる
477/970

33-37


 連続の【隠密】使用による負荷で猛烈な吐き気に襲われるが、膝をついて咳き込む程度でなんとか治まった。

 だが、この状況だけはどうにもならなかった。

 赤く染まった床にばらまかれた人間の四肢や臓物、酷い悪臭が鼻を刺激してくる。

 訳がわからなかった。

 いきなり目の前にいる人達が身体を切り刻まれた。しかも、自分がいた場所にも変な裂け目が現れていた。【隠密】を発動させていなければ、間違いなく自分もああなっていた。

「……おっさん……わりぃ……」

 目の前に転がっている首と目があい、ホムラは一筋の涙を流した。


 本当は銃なんて撃ちたくなかった。

 そんな私の気持ちに気付いて止めてくれようとしたのに、私は酷い態度を取ってしまった……。

 良い人だった……私のような子どもに優しくしてくれる大人だったのに……私が咄嗟に動けていれば、この人だけは助けられたかもしれないのに…………私は自分しか守ってない……。


 ホムラが嘆いていた時間は10秒の短い時間だけだった。だが、それも仕方ないと言えた。

 目の前で先程の男が自分の前で自分に優しくしてくれた男の首を踏み抜き、そのまま皆がいる方向に歩を進め始めたからだ。

 その光景を見たホムラは怒りのまま床に落としてしまっていた銃を握り直して、赤髪の男に向けた。

 だが、銃を握る手が震えて、うまく照準が定められなかった。両手で握り直しても手は震えるのを止めない。

 今更、人を殺すことに躊躇いがある訳じゃない。血を見るのが嫌な訳でもない。仲間が死んだことで気落ちしている訳でもない。


 怖い……この男が怖い!

 目の前で起こったことが、脳裏に焼き付いて離れない。

 もしはずしたら?

 もし殺せなかったら?

 もし……銃が効かなかったら?

 間違いなく自分は殺される!!

 残り30秒くらいで自分の特殊能力は解ける。それまでここにいれば、自分が見つかることはない。30秒も待てば、その間にこいつはどっかに行く。

 死にたくない! ダンナと話してようやく自分がなりたいものを見つけた。保育士ってやつになるために二神(ふたり)の神様に勉強まで見てもらったんだ!!

 こんなところで死にたくない!!


 それが……私の偽らざる本音だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ