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いきなり腕を握られて、ホムラは隊長の男を驚いたような表情で見た。
「もういい! そんなに辛いのであればもうやらなくていい!」
「な……何言ってんだよ? 私は大丈夫だ……」
「全然大丈夫じゃないだろう? 無理しなくていい……」
「……っ! 大丈夫だって言ってんだろ!! 私はダンナと約束したんだ! ダンナの大切な人達は私がダンナの代わりに守るって……そう約束したんだ! ここでやらなきゃ……私がやらなきゃいけないんだ!!」
自分を心配してくれている相手の腕を振り払ったホムラは、再び狙いを定めて、体勢を整いかけている相手の身体に向かって跳弾を放った。
ホムラが放った跳弾は、壁に当たり、盾の横を通り敵の脇腹に命中した。
跳弾に当たった敵はうめき声を発した直後、脇腹を撃たれたことで盾を手放してしまう。直後に放たれた銃弾の雨はその敵に容赦なく襲いかかる。
(残り二人)
全員の意識に敵の人数が刻み込まれ、隊長の男もこの状況で言い争うつもりはないらしく、悔しそうな顔で味方に一斉射撃の指示を出し始めた。
押しているのは明らかに兵士側で、このままいけば何事もなく勝てるとその場にいる誰もが思った瞬間、ホムラは再び嫌な感覚を覚えた。
それと同時に赤髪の男が不敵な笑い声を発し始めた。
「人間にしては意外と面白かったなぁ……その健闘を讃えて、俺様も少しだけ本気の技を使ってやろう……」
男がそう言った途端、ホムラはその殺気を直に感じて思わず特殊能力【隠密】を発動させた。
先程使ったため、長時間のインターバルが無ければ負荷で動けなくなるかもしれないというデメリットがあったにも関わらず、無意識に発動しなくてはならないと思った。
だが、結果的にそれがホムラの命を助けた。
赤髪の男が謎の攻撃を発動させた瞬間、自分の視界に映っていた全員が赤い液体を身体から噴き出して倒れてしまった。
何が起こったのか自分にもわからなかった。
しかし、たった一つ……これだけはわかった。
あの赤髪の男が技を発動させた瞬間、敵も味方も関係なく、全員が殺されたのだ。
この場に立っていたのは、技を放った張本人と【隠密】を発動させているホムラだけだった。




