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「……ここもつまんねぇなぁ……さっさ終わらすか……時間も充分だろ……」
銃弾が飛び交う戦場の中で退屈そうに欠伸をした赤髪の男は、前にいた3人に「護れ」の指示を出した。
その指示を聞いて、一瞬だけ驚いたような顔を向けた3人だったが、すぐに頷き、手に持った大盾で銃弾を防ぎながら、固まって一つの陣形を組み始めた。
「さて……ちょっと本気を出すか……」
首をポキポキと鳴らした男は、それまで隠していたオーラを少しだけ放出した。
戦況は明らかに兵士側が優位だった。しかし、ホムラは嫌な予感がおさまらなかった。
戻れと言われながらも、その場にとどまり続けたのは、その嫌な予感を確かめずに戻れば後悔することになると直感が教えてくれたからだ。
そして、いきなり発された威圧感……優真が時折放つ全身が硬直して立つこともままならなくなりそうな威圧感と似たような感覚を感じた。
(……やばい……このままじゃ……)
救世の使徒という組織で前線に立ち、数々の死闘を繰り広げてきたホムラには感じ取れた。そして、先程の男性兵士が見せる表情からも同じことを思っているのだとわかった。
あいつに攻撃を撃たせるのはまずい。
それが二人の見解だった。
「急いであの赤髪野郎を撃つんだ!!! じゃねぇと全員死ぬぞ!!」
いきなり後ろから放たれた少女の声に兵士達が振り向こうとするも、その前に先程の男性が声で制止した。
「振り返るな! そんな暇があるなら1発でも多くの銃弾を後方にいるあの男に浴びせよ!!!」
男性の言葉で緊迫感が伝わったのか兵士の男達は手に持つ銃を赤髪の男に向け始めた。
しかし、その銃弾は赤髪の男の前に立つ3人の男に盾で防がれる。
「そこの君! 私と同時に気付くとは相当な猛者なのでしょう。……誠に申し訳ないが……お手をお貸しいただけないだろうか?」
打開出来ないこの状況を静観することしか出来ないことに歯噛みしているホムラに先程の男性が悔しそうに聞いてきた。
その言葉に込められた意図はわかる。
敵の盾が想像以上に硬く防御に回られた途端、傷をつけることすら叶わなくなったからだ。そのうえ、そいつらの後ろにはくらえば死は避けられないであろう攻撃を準備している男がいる。
近付こうにも、反撃が無くなった訳では無いため難しいことに変わりはない。
だからこそ、先程の指示でホムラの実力を知った男はホムラに何か策がないか聞いたのだ。
「……元々そのつもりだったんだ……あんたが良いって言うんなら、私もやるだけのことはやってみせるさ……」




