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「くそっ……まさかそんなことになってるなんて……」
シルヴィの話を聞いた俺は自分の考えが甘かったことを再認識させられた。
最悪な状況になってしまった。もちろん、シェスカとファルナの二人を助けに行ったことは後悔していない。こっちの方でもシェスカとファルナは敵から銃弾の雨を浴びていた。もし、少しでも遅れていれば、どちらか、あるいは二人を失うことになっていたことは間違いないだろう。
例えそんな状況でなかったとしても、助けに行かないという選択肢はなかった。
だったら、今戦っている者達の為にも、1分1秒でも早く助けに行かなくてはならないだろう。
「とにかくシルヴィ達は俺がそっちに行くまで待ってろ! ホムラは俺が助けに行く!!」
「……はい……お願いします……お願いします」
シルヴィがインカム越しに涙を流している事実を知り、優真は走る足を速めた。
◆ ◆ ◆
特殊能力【隠密】を解いたホムラは王族直通通路に残った兵士達と共に戦うため、重くなる足を全力で動かしていた。
本当は皆と一緒にいたかった。
皆と一緒にあの人が戻ってくるのを待っていたかった。
でもそれは、自分のやるべきことじゃない。ここに連れてきてもらう際に、自分は無理して連れてきてもらったのだ。
ならば、自分の居場所はあそこじゃない。
「援護に来ました!!」
軍人の一人に向かってそう言うと、振り向いた軍人の顔が一瞬でしかめっ面になった。それはそうだろう。ホムラの見た目は年端もいかない少女で、その格好は万里華が見繕った少女らしい服を着ている。そのうえ、髪で片方の目を隠していることが気にくわない。
明らかに戦う者の格好ではない。
だが、軍人が顔をしかめた1番の理由は彼女が明らかに子どもと認識すべき見た目だったからだ。
スレンダーで高くない身長に童顔……そんな少女を戦わせるのは、子どもを司る女神の信仰者として絶対にしてはならないことだった。
「今すぐ戻りたまえ! ここは戦場だ!! 子どもの来るべきところではない!!」
チョビヒゲにダンディーな顔立ちの男性は、そう言ってから再び手に持っていたライフルを敵に向けて撃ち始めた。
「敵は残り4人だ! チャイル皇国に仇なす敵を許すな!! 犠牲になった者達……愛する者達のために、絶対に奴らを根絶やしにせよ!!」
先程の男性が通路全体に届きそうな大声でそう言うと、各地から雄叫びが上がり、銃撃戦が更に激しくなった。




