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「……もしかして……【隠密】を使ったの?」
「隠密? 何ですか……それ?」
万里華が絶望したような表情を見せながら呟いたその言葉に、ユリスティナが食いついた。
「……【隠密】はホムラちゃんの特殊能力なんだって。……普段はそこまで強力な効果じゃないんだけど……1分間だけ絶対に誰もホムラちゃんを見つけることが出来なくなっちゃうの。例え動いてなくても見つけることなんて出来ないんだって……ホムラちゃん、多分それを使ったんじゃないかな……」
そんな馬鹿な、と言いたくなってしまうカルアーデだったが、現に目の前で起こった出来事が彼女の言葉に信憑性を与えていく。そして、もしそうだとした場合、彼女は危険な場所に残ったことになる。
「とりあえずもう一度扉を開けます。危険なので離れてください!」
そう言ったカルアーデは懐から鍵を取り出して、鍵穴に差し込もうとした。しかし、何かに引っ掛かり、鍵がうまく差し込めなかった。
「……無駄だよ」
その声は扉の先から聞こえてきた。
「ホムラさん!」
声の主が探していた人物だと知り、シルヴィは扉の方に駆け寄っていく。
「……鍵穴にぶっぱなしたから、鍵穴を直さない限り、ここが開くことはねぇよ……」
「なっ!? ……なんでそんなことを……」
ホムラの予想外過ぎる言葉に、カルアーデは驚きを顔に表していた。
「……なんでもなにもないだろ……あいつらは鍵を持ってる……だから、鍵を壊す奴がいるだろ? ……それに……ダンナがせっかく前を向いて歩こうとしているんだ……私だって……やれることはやってやる!!」
ホムラが叫んだ直後、何処かに駆けていく足音と銃声の音だけが耳に届いてきた。シルヴィは何度も扉を叩き、泣き叫びながら帰ってくるよう願っても、彼女が戻ってくることはなかった。




