33-27
「ど……どういうこと!? この通路は絶対に開かないんじゃないの!」
万里華が映像の方を青ざめた表情で見るカルアーデに聞くが、彼は「あり得ない……」と呟くだけで、彼女の声が聞こえていない様子だった。
「……な……なんで賊が鍵を持ってるんだ……」
映像で一部始終を見ていたカルアーデだけが見ていた。黒に近い赤色の髪の男が、懐から何かを取り出して扉の鍵を開けた光景を。それは信じられない光景だった。
「だ……だって鍵はここにーー」
「カルアーデ!!!」
大きな声でパニック状態になったカルアーデの名を呼んだのは、座っていた椅子から立ち上がったチャイル皇王だった。
焦りを隠せなくなっていた人達のせいで少し騒がしくなっていたはずが、彼女の行動で部屋にいた誰もが口をつぐむ。
「緊急事態だというのに、いずれ国を背負って立つ貴方が、不安を煽るような行動をしてどうします! 扉が突破されたということは敵がここに来るということなのですよ! 外の声に耳を傾けなさい。外は逃げ場を失った状態で銃を向けられ、危険に晒されています! 幸いにも大盾を持った部隊と軍の兵達が応戦しているようですが、楽観視は出来ません。急ぎ、貴方が鍵を開けて戦えない者達を避難させなさい!」
「は……はい!」
軽くパニックを起こしていたカルアーデも状況を理解させられ、落ち着きを取り戻すとまではいかないが、少なくとも、やるべきことに目を向けられるようになっていた。
「申し訳ございません。眷族の方々がご滞在の時にこのようなことが起きたこと、国を代表する者としてお詫びいたします。しかし、ことは一刻を要します。私は一足先に扉を開けて参ります。皆様は皇王様と共にいらしてください!」
万里華達に向かって頭を下げたカルアーデは、一方的にそう言うと扉を抜けて出ていってしまった。
カルアーデが出ていってから1分程が経ち、皇王が遂に立ち上がった。
「皆様、行きましょう」
彼女がそう言うと、全員が立ち上がった。カメラの様子では軍の者達以外は全員カルアーデが開け続けている扉から避難している。残りは自分達だけだった。
しかしーー
「私……行けません!」
いきなりシルヴィがそう言ったのだった。




