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耳に着けていたインカムから届いたシルヴィの切迫した状況が伝わってくる声。彼女の声色からただならぬことが起こったことを察し、優真は気を引き締めた。
「敵が……ホムラさんが……」
「少し落ち着け、シルヴィ! ホムラがどうしたって?」
走る足を【ブースト】で速め、彼女達がいるはずの直通通路に向かいながら、彼女から詳しい話を聞くことにした。
◆ ◆ ◆
~優真がシェスカとファルナと別れる少し前~
カルアーデの案内で王族の部屋がある区画に繋がっている通路。その道中にある窓がない部屋に待機していたシルヴィ、万里華、ホムラ、ユリスティナの4人は、用意された椅子に座っていた。近くには、チャイル皇王やカルアーデの姿、そして皇族を護るために部屋へと足を踏み入れることが許された数人の騎士。
そんな状況の中では、大抵の人が恐怖を感じて震えるのだろうが、この部屋でそんな感情を抱いているのは一人もいなかった。その理由は、優真という存在がこの城内にいることだけではない。敵を阻むこの通路に絶対の自信があったからだ。
この通路の扉は鍛冶の神が誇る眷族筆頭の最高傑作と呼ばれ、どんな攻撃をされても壊れることがないと先祖代々伝えられている。その扉を開ける方法は、皇王とその皇王が託した二人だけが持つ鍵を使うしかない。
全員気を緩めている訳ではないが、恐慌状態にはなっていなかった。
「あの~カルアーデ殿下に質問なのですが……」
「はい、なんでしょう?」
椅子に座っているカルアーデにユリスティナが声を掛けたことで、シルヴィと万里華の視線がそちらの方に向く。
「カルアーデ殿下はいったい何をなされているのでしょうか?」
ユリスティナは指をカルアーデが操作していた液晶パネルに向けながらそう聞いた。シルヴィと万里華も既にその存在には気付いていたが、聞こうとは思っていなかった。シルヴィにとってはそんな訳がわからないものよりもシェスカとファルナの二人が無事かどうかの方が気になるし、万里華に関してはそれがどういうものかに関して予測がついてるからだ。




