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本当は人を傷つけるのは嫌いだ。皆で仲良く生きていけばいいのにと思うし、出来れば誰にも傷ついてほしくはない。……でも、そうは考えていても、こうして大切な人が傷ついてしまう。
……俺がおかしいのだろうか?
暴力で傷つく人はかなりの数がいるし、相手の言葉で傷つく人もいる。相手の行動で傷つく人間だって決して少なくはない。……そして、傷つけたことを悔やむ人だって少なからずいるのに、傷つけても反省をしない奴や、傷つけたことに気付かない奴だっている。人を傷つけるのを楽しむ奴までいやがる。
……だからといって、ただ、幸せに暮らしたいと願い、夢を叶えたいと望む人間から大切なものを奪うということが許されるのだろうか?
断言しよう。俺は絶対に許さない。
目の前で使えなくなった銃を廊下の床に叩きつけている人間達の姿を、優真は怒りのこもった眼差しで見る。
武装した人間達はサバイバルナイフによく似た凶器を取り出し、優真に襲いかかる。
だが、彼らのナイフは優真に届かない。
最初の一人の腹に、優真は発動した【ブースト】で威力が倍増した拳を叩き込んだ。
一瞬で起こった出来事に、武装した人間達は反応を顔に出すことしか出来なかった。それでも彼らは振り上げた刃を収めることはなく、そのまま突っ込んだ。
しかし、【ブースト】を発動している優真にとって、彼らの攻撃はカメが移動するくらいの速度に感じられた。
「なんでお前らのような人を平気で殺せるような奴らがいるのか、俺には理解できないよ……」
全てが止まった世界で優真はそう呟き、彼らに対して悲しい瞳を向けた。
そして、優真は自らの意思で時を動かし、目の前にいた全員に重い拳を1発ずつ叩き込んでいった。それだけで、ナイフで襲いかかろうとしていた人間達は電池が切れたかのように動かなくなり、倒れこんでしまった。
「……本当はさ……お前達に攻撃をすることが許されたのは、撃たれたファルナだけなんだろう……。でも、ファルナは心の優しい女の子だから……お前達への攻撃よりも、シェスカを守ることを優先したんだ……。だが、それでお前達が許されるなんてことはない。神の家族と呼ばれる存在……それが眷族だ! お前達が銃を向けていい存在じゃない!!」
そう言いながら、優真は腰に携えていた鞘から一振りの刀を抜いた。
「お前達がここまで何人殺したとか、誰を殺したかなんて俺は知らないし、興味もない。……ただ……」
意識を失うことが出来ず、殴られた痛みで立つことすらままならない人間達は、優真の殺気を全身で感じて、必死に命乞いをしている。しかし、それは優真の耳に届かない。
「お前達が俺の大事な存在に手を出すことだけは、絶っ対に許さない!!!」




