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条件が揃わないと最強になれない男は、保育士になりたかった!  作者: 鉄火市
33章:実習生、予知を覆そうと躍起になる
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33-16


 壁に叩きつけられた轟音が響き、白虎の姿となったファルナは叩きつけられた壁からずるずると真っ赤な血を壁に塗りながら床に倒れ伏した。

「ファルナお姉さん!!!」

 シェスカは慌ててファルナの方に駆け寄るが、シェスカの呼び掛けにファルナは反応を示さない。

「はぁ!? ……よっわ……神獣族の白虎といや、戦闘特化だろ? いくらなんでも弱すぎんだろ!! ……もういいや、後はやっといてくれ……」

 男は動かなくなってしまったファルナの姿を見て、幻滅したかのようにそうぼやくと、空中に円を描き始めた。

 男が指で円を作ると、そこに黒い渦が出現した。その渦は徐々に大きくなり、直径2メートルはありそうな縦長の円になると、そこから先程の奴らと同じような格好をした人間達がぞろぞろと出てきた。その数は20人程だった。

「あ~……半分は俺様がここから出た後、ここでこいつらの始末~……それが終わり次第、ここの迷路を攻略して~出てきた王様達を殺しとけ……残りの半数は俺様についてこい」

 武装した人間達が返事をしたことで、「そんじゃ後はよろしく~」と言いながら男はついてくる半数と共に渦の中に入っていった。


 渦が徐々に小さくなっていき、ついにはそれが消えてしまったことで、武装した人間達はお互いを見て頷き、手に持ったアサルトライフルを、倒れ伏した化け物と泣きじゃくりながら「ファルナお姉さん!」と何度も連呼する幼い少女に向け始めた。

 そして、彼らはゆっくりと引き金を引き、発砲音を響かせ、銃口から銃弾を発射した。


 それは、一瞬の出来事だった。

 銃弾が放たれ、赤い血が宙を舞った。

 しかし、狙われていた筈のシェスカは無傷だった。

「ファルナお姉さん!!?」

 大声で自分を守ってくれた存在の名を叫ぶが、彼女は目を細めるだけで返事をしない。

 体を起こすことすら出来ないファルナがシェスカを前肢で引き寄せ、自分の体で銃口から隠したのだ。

 小さく呻き声を上げ、綺麗な白い毛に赤い液体が塗られていく。

「……大丈……夫……シェスカ……僕が守る……」

 か細い声でそう言ってくれるファルナ……だが、シェスカに触れている力が徐々に弱まっていく。

 硬くなる毛でも、全ての銃弾は防ぎきれていない。急所の毛は他よりも硬いからこそ、致命傷はなんとか防げている。だが、それでも銃弾はファルナの皮膚を抉っていく。

 しかし、突如銃声が鳴り止んだ。


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