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しかし、結果はうまくいかなかった。
何故かどこの部屋にも人がおらず、移動した形跡だけが伺える。まるで自分達しかこの空間にはいないんじゃないかと錯覚してしまいそうで、ファルナもどんどん心細くなっていく。しかし、ファルナは自分が泣く訳にはいかなかった。今自分が涙を流せば、手を握っているシェスカを不安にしてしまうからだ。
優真という頼れる存在が居ないのなら、シェスカは自分が守らなくてはならない。それを自覚し始めたファルナだからこそ、ここまでシェスカを引っ張ってこられたのだ。
「……声が聞こえる?」
ファルナの頭についている猫耳がピクリと動き、小さな音を拾い上げた。それは、ここまで誰にも出会うことが出来なかったファルナにとって希望そのものだった。ここの人なら大好きな人達が待っている部屋まで案内してもらえると、ファルナはその表情に笑みを宿す。
ファルナはシェスカに「行こっ!」と笑顔を向けて走り出した。幼い彼女に負担がかからない速度で走り、未だに聞こえ続ける声を頼りに、迷宮通路を攻略していく。
運が良かったのか、その目的地までは障害が少なく、スムーズに行けた。
しかし、彼女達の視界に映った人物は明らかにここの人とは思えなかった。
そこにいたのは数人の人間……武装しており、体格からとても一般人とは思えなかった。しかし、それだけで彼女達はここの人間だと判断した訳ではない。たった一人、顔をマスクで隠していない男がおり、そいつだけは他の奴と違った。後ろを振り返ったそいつと目が合ったことで、ファルナの額にうっすらと汗が浮かんでいく。
「そのガキ共を撃ち殺せ!!!」
その男が焦ったように指示を出すと、そいつの周りにいた人間がファルナ達に気付き、彼女の方に銃を向けて発砲し始めた。




