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暗く閉ざされた空間、そこには円卓があり、10脚の椅子があるだけだった。
しかし、いつの間にかその空席は一つ、また一つと徐々に埋まっていき、10秒も経たない内に、空席は一つを除いて全てが埋まってしまった。
「皆、定刻通りに来てくれて感謝する」
椅子に座った男が、周りを見渡してその者達に向かって声をかけた。
「はいは~い! 今日もパル君が来てませ~ん」
席に座っていた少女が手を上げて軽い口調でそう言うと、席に座っていた一人が舌打ちをした。
「パルシアスが来ねぇのは今に始まったことじゃねぇだろ! あいつは、2位の癖にその重みがまったくわかっていやがらねぇ!」
「いやいや~、今日はちょ~っち、遅れちゃっただけだよ~」
舌打ちした男が憎々しげにそう言うと、空いていた筈の空席から、軽い口調の返事が返ってきた。
そこには、いつの間にか男が一人座っていた。笑顔を振りまきながら、遅れたことをまったく悪いと思っていないような雰囲気を漂わせる青年。
「……遅いぞ」
「ごめんって~。でも、今日はいつもと違ってちゃんと来たよ~。なんたって、話題が話題だからね~」
「……一応、議題なのですが」
この空間でも特に異質な空気を放つ隣どうしの会話に、少し離れた席に座った男が会話に割って入った。
「あれ~、そうなの~? 話題と議題ってどう違うの?」
「もういい、さっさと話せ」
一番最初に口を開いた男が威圧的にそう言うと、先程会話に割って入った男が立ち上がる。
「は……はい! それでは僭越ながら、霧の神様の眷族であり、序列7位のネビアが、事の真相を話させていただきます。一ヶ月前、我が神による眷族探しが行われました。その際、Sランクモンスターであり、我が神のペットでもあるミストヘルトータスが放たれたのですが、…………ミストヘルトータスは亡骸となって神の下へと帰りました」
「すっげ~な~! Sランクモンスターを殺したやつがいるんだろ? 戦ってみて~」
「あはは~、パル君ってば子どもみた~い」
「ハッ、所詮亀は亀だろ? 殺ろうと思えばガキだって殺れる」
「フフ、さすがに子どもでは不可能でしょう」
丁寧な口調で隣の男にそう言ったのは、テンションの高い少女とは真逆の落ち着いた女性だった。
「とはいえ、特に驚くことでもないことも事実。Sランクモンスターとはいえ、眷族探しをしていたとなれば、実力の半分も出していないのでしょう? それなら、雑魚と大差ありません。別に気にすることでもないでしょう」
その女性は全員に向かってそう言うと、
「それもそっか~」
「だよね~」
「たりめーだ」
と先程の3人から返事が返ってきた。
しかし、ネビアを含めた他の5人はその会話に入ろうともしない。
何故ならその5人のみが自由に発言が許された実力者達だったからだ。
「イルジョネアの言うことにも一理ある。今回の件は、特に問題にする必要もないだろう。ましてや、霧のところが勝手に眷族探しをして返り討ちにあっただけだ。我々が動く必要もないだろう」
ちょっと待ってくれ、と制止の声をかけてきたネビアを目だけで制し、男は「解散」と言ってこの場からいなくなった。
他の者達も、全員その場からいなくなってしまい、遂にはネビア一人だけとなった。
「……ちくしょう。……神様になんて言えばいいんだよ……」
そうぼやいた後、ネビアもすぐにその場から姿を消した。
空間は、再び円卓と10脚の椅子だけとなった。
名前変更しました。パル君はパルシアスに変更しました。




