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チャイル皇国の城にある部屋にハナさんの【大地渡り】で移動してきた俺は、全員がいることを確認すると、部屋の外にでた。
白く汚れの全く見当たらない廊下に、二人の使用人を見つけ、俺はその二人に皇王様に自分が来たことを伝えてほしいと伝言を頼み、快く引き受けてくれた彼女達にお礼を言って、部屋に戻った。
しばらくすると、部屋の扉がノックされ、「カルアーデですが、入ってもよろしいでしょうか?」という声が聞こえたため、俺は入室を許可した。
「失礼します。おはようございます、優真様。ご到着なされたと伺ったので、お迎えにあがりました」
ソファーに座っていた俺に、入ってきたカルアーデ君は会釈した。
「ありがとう、それじゃあ俺は行ってくるから、皆はおとなしくしといてくれよ?」
正装でやって来たカルアーデ君に礼を言って、部屋でトランプをしていたシルヴィ達に再度釘を打つ。
「え~、お兄ちゃんまたどっか行っちゃうの? シェスカも行きた~い!」
「ごめんな、帰ったらいっぱい遊んであげるから、今日はここでおとなしくしていてくれないか?」
「むぅ~」
シェスカは頷いてくれず、ぷいっとそっぽを向き、シルヴィの方に行って、座っている彼女の足に抱きついてこっちを向いてくれなくなった。
「あ~あ……またふてくされちゃったな……じゃあ行こっか、カルアーデ君」
「よろしいのですか?」
「ああ、帰って遊べば機嫌も治してくれるだろ……」
「わ……わかりました。ではこちらへ」
そして俺は手を振ってくる彼女達に手を振り返しながら、部屋から出た。
◆ ◆ ◆
「…………なるほど、それでアマミヤ様はその……ほいくし? という新しい職業をこちらの国で取り入れてはくれないか? そういうことですね?」
「ええ……この前同盟の件を受け入れてもらったばかりなのに、こんなことまで頼んで……本当に悪いと思っています……」
俺は話を聞いてくれた皇王様に対して、頭を下げる。
保育士になりたいという旨を伝えると、保育士について聞かれたため、俺は大学で学んだ保育士の定義を説明した。
他国においては、絶対受け入れられないであろう提案ではあるが、俺には勝算があった。熱心な信仰者の彼女ならば、子どもにとって利のある提案であり、なおかつ眷族筆頭の意見であるならば、無視するどころか即否定すら出来ない。
多少決定に時間はかかるだろうが、悩んでいる間に、受け入れられた際の計画を練ることが出来る。
そう考えていた。




