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「……どういう……ことだ?」
俺がハナさんの方を見ると、彼女は真剣な表情をしていた。その目からは、自分の意思を押し通したいがためについた嘘という考えは見られない。
「ここは大地の女神様が作った空間だけど、ここが襲われないとは限らない。ユウタンが前に鉄の女神様を呼び出した時みたいに、中からこっちと何処かを繋ぐゲートみたいなのを出現させて、何かを送り込むなんてされれば、私達だけじゃ対処のしようがないよ」
「……いやいや、ハナさんって眷族達の中では3位なんだろ? ハナさんに勝てる奴なんてそうはいないだろ?」
「……1対1ならね……。でも、Sランクモンスターが一気に攻めこんできたり、他の眷族達に攻められれば無理。今は私以外の眷族も別件で動いていていつもより手薄だしね。それに、私やメイデンの特殊能力は、多対1では強力な力を発揮できるけど、マリリン達の近くじゃ巻き込んじゃうから撃てない。要するに、私達じゃマリリン達を直接守れないの。だから、ユウタンが近くにいないとまずい……と思うな。パル君がこっちにユウタンがいれば大丈夫って言ってたんなら、そういう可能性は考慮した方がいいと思うよ?」
彼女の発言は完全に予想外だった。
俺はてっきり、チャイル皇国だけが狙われるんだとばかり思っていた。
だからこそ、安全なここに彼女達を待機させ、俺だけでチャイル皇国を危機から救おうと考えていた。チャイル皇国側に多少の犠牲はあるだろうが、それは仕方ないと割り切ろうとしていた。だが違った。それでここにいる皆が無事だとは限らないのだ。
確かに、パルシアスは俺がチャイル皇国を守ろうとしないのであれば、チャイル皇国が多大な被害を負うと言っていた。
でも、彼女の意見を聞いてようやくわかった。
敵の狙いに彼女達も含まれているのだとすれば、チャイル皇国とここの2ヶ所を同時に襲われる可能性もあるということだ。
二人の実力は身をもって知っているから疑ってはいないが、普段はこんな真剣な表情をしないハナさんが真剣な表情で伝えてくるのだから、嘘ではないのだろう。
「……わかった。……チャイル皇国にはここにいる皆で行こう……」
優真が長い葛藤を経て、渋々そう言うと、彼女達はその表情に笑顔を見せた。
「……ただし……皇王様との会談中は、全員、皇王様に貸してもらっている部屋に待機。そして、ここにいるメンバー全員についてきてもらうし、もしもの時は、絶対に言うことを聞いてほしい」
優真がそう条件を出すと、彼女達は素直に頷いてくれた。




