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そこは必要最低限の家具しか置かれていない普通の部屋だった。そこに突如、扉も開かずに3人の人が入ってきた。
「ありがとね、ハナさん。また夕方頃に来てもらえると嬉しいんだけど……お願いしてもいいかな?」
「それはいいんだけどさ~……」
俺は、城の一室まで特殊能力で送ってくれたハナさんに感謝の言葉を伝えた。だが、彼女は少しばかり機嫌が悪そうだった。
「やっぱり私もついてっちゃダメ~? 私だってユウタンと一緒にいたいのに~」
「だめだよ~、ハナちゃん。公平なじゃんけんの結果なんだから、我が儘言って優真を困らせちゃうのは駄・目」
そう言ったのは、右手をチョキの形にしている万里華だった。いつからなのか、ハナさんをちゃん付けで呼んでいるが、ハナさんはそれを気にした様子はない。
どうやら思っている以上に二人の仲は良好なようだ。
「まぁ正直言って、俺の至らない所を一番わかってくれている万里華の方が俺のサポートにはぴったりだしね。それに、ハナさんには、シルヴィ達に危険が迫らないように警戒していてほしいんだ。もしも何かあったら、俺をすぐに呼んでほしいしね」
「……え~っと、それはつまり、私のところの天使達が信用できないってことかな? ああ見えて、あの子達も戦闘は出来るよ?」
彼女に諦めてもらうために言ったのだが、どうやら不信感を抱かせてしまったようだ。
「あ~……別にそういうことが言いたいんじゃなくてだなぁ……」
「なんかあったの、優真?」
万里華にも見抜かれ、二人が俺に話すよう目で訴えながらにじり寄ってくる。
不安にさせてしまうからという理由で、話すのを躊躇っていたのだが、いつ来るかわからない敵に俺一人で対応しきるなんて不可能に近いだろう。なによりも、対ネビア戦で一人の限界を知った。少なくとも、ハナさんやメイデンさんには協力してもらうべきだろう。万里華も、避難をスムーズしてもらう為に伝えておいた方がいいかもしれない。……まぁ、最もらしい理由を並べてはみたが、本当は彼女達の鬼気迫る迫力に根を上げただけだ。




