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優真とシルヴィの二人は廊下を歩いていた。しかし、先程、仲直りをしたにも関わらず、優真の顔は暗い。そして、その隣を歩くシルヴィも苦笑いを浮かべていた。
「はぁ……結局昼飯の時間が過ぎちゃったな……さすがに腹減った……」
優真が辛そうに愚痴ると、シルヴィも「ですね……」と相槌を打った。
優真が辛そうにしている理由。それは、昼食を食べられなかったからだ。先物仲直りした二人が、仲良く宴会場に向かうと、既に食事は片付けられており、結局昼食は食べられなかった。
「ここ最近、食事が喉を通らなかったから……めっちゃ腹減った……」
「すいません、私があんな所にいたせいでこんなことになってしまって……でも、安心してください。ユーマさんの分は後で私が作りますから!」
「まじか!! それなら、早くシェスカとファルナにこれを届けて昼食にするか!」
シルヴィの言葉一つで元気を取り戻した優真は、スタンプシートを確認した。
六つのスタンプが押されたスタンプシートの裏には、優真の部屋がゴールだと書かれていた。
シルヴィと二人で自室に着くと、部屋の明かりはついていなかった。てっきりシェスカとファルナがここで遊んでいるのかと思ったのだが、どうやら違ったらしい。
「……まだ来てないのか?」
そう呟いてから、部屋の明かりをつける為に部屋の中に入った。その時だった。
部屋の明かりが急に点けられ、小さな破裂音が耳に届いた。
いきなり明かりが点けられた時に、手で目を防御してしまったことで、音の正体はわからなかったが、何かが飛んできたことで、その正体がわかった。
それは、クラッカーだった。
目を前に戻すと、そこには明かりの紐に手を伸ばしていた万里華とクラッカーの紐を引っ張ったシェスカとファルナが笑顔でこちらを見ていた。
「ゴールおめでとう、お兄ちゃん!! これで皆仲良しさんだね!」
シェスカに屈託のない笑みでそう言われ、少し恥ずかしくなって頬を掻いた。
「万里華も居たんだな……てことは今回のスタンプラリー、万里華が主催したのか?」
俺は彼女にそう聞いた。
そもそも、今回の件はよく出来すぎていた。本当に子ども達だけでこんなことを計画出来るのかずっと謎だったのだが、万里華が始めたのなら納得だった。
しかし、彼女は首を横に振った。
「ううん、ちがうよ。私はシェスカちゃんとファルナちゃんから、優真が皆と仲直りしてくれるにはどうしたらいいの? って聞かれたから、皆の元を回るスタンプラリーを勧めただけで、ほとんど彼女達がやったことだよ。私が書いた文字を参考にスタンプシートを作ったり、優真への賞品を作ったりね」
「うん! お兄ちゃんにプレゼント作ったの!」
楽しそうな表情のシェスカが取り出したのは、金色のメダルだった。よく見てみると、金色の折り紙で作られた物みたいだ。
「そっか……シェスカ、ファルナ、それから万里華も、3人のお陰で皆にしっかりと謝ることが出来たし、渡したかったものもちゃんと渡せたよ……本当にありがとう」




