31-11
現在俺は旅館のような雰囲気から一転した通路を歩いていた。石で出来たその通路は1階よりも一つ下の階層にあり、俺も半信半疑でこの道を歩いている。
「……ここって地下があったんだな……というか、本当にここにいるのか?」
先程、ハナさんとメイデンさんに、シルヴィとホムラが何処にいるか聞いたところ、数時間前にホムラが地下にある図書館の鍵を借りに来たとのこと。
あのホムラが図書館に行くとは到底思えないが、そんな嘘を俺についたところで彼女に利はないだろうからとりあえず行ってみることにした。
「……ここか?」
しばらく歩くと大きな扉の前に着いた。通路もここで止まっており、ここまで部屋の類いが一切見当たらなかったことから、俺はここだと確信を持って、扉をゆっくりと開けた。
「……うわぁ……この本の数……一体何冊あんだよ……」
その部屋には大量の蔵書があり、何段にも重ねられた本棚にびっしりと並んでいる。
一番高い本棚は、100メートル以上あるんじゃないかと思ってしまう程高く、それが幾つもある。
それらを見ながらしばらく歩いていると、話し声が聞こえてきた。
「何度言ったらわかるの? これじゃまともに読むのも億劫になるんだから、ちゃんと書きなさいって言ってるでしょ!! あなたは文字すらまともに書けないんだから、まずは綺麗に書いて覚えないと駄目じゃない!」
「す……すいません! すぐにやり直します!!」
「10分よ。10分でやってみせなさい。そして、同じミスをした場合はもう二度とあなたに教えないから。……わかったわね!」
「はい!」
図書館に一つだけ置いてあった机にいたのは、予想外な人物だった。
一人は、現在机に向かって、何かを書いているホムラ。彼女に関しては、わざわざ探しに来たのだから、ここに居てもらわなきゃ困る。
問題は他の二人……いや、二神だった。
一人は、ホムラに何か指導している様子の茶髪の女性。髪を後ろでまとめており、スーツのような服を着ている彼女は、ハナさんの主神、大地の女神様だ。
もう一人は、アニメの中二病男子キャラがよく着ているような黒い衣装にマントという格好で、本を読んでいる銀髪の少女。彼女はメイデンさんの主神、鉄の女神様だ。
なんでまだ鉄の女神様がここにいるのか聞きたいところだったが、俺には何故ホムラがこの二神と一緒にいるかの方が気になった。




