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「……ったくさ~、ユリスティナちゃんもどうやったら、こんな料理になっちゃうかな~?」
「本当に申し訳ありません、ユウマ様!」
「いいって、いいって。わざとじゃないんだろ? それなら俺に怒るつもりはないよ」
何度も頭を下げてくるユリスティナにそう言って、俺は彼女を許すことにした。
正直死にかけたが、それでも俺のためにしてくれたことには変わらない。さすがにこれ以上食う気はしないけどさ……てか何入れたらシチューでヌメッてするんだろ……。
優真、万里華、ユリスティナの3人は協力して調理後の後片付けをしていた。ユリスティナが作った料理に関しては、捨てようとしていたユリスティナの手を止め、優真が自分のアイテムボックスにしまった。
そんなこんなで全ての作業が終わり、優真達は丸椅子に座った。
「なぁ、万里華……」
「なに?」
突然声をかけられたことで頬杖をついていた万里華は、優真の方に目を向けた。
「……この前は悪かったな。お前だって保育士目指してたんだから、その事実を知った時は辛かったんだろ? ……それなのに俺は、万里華の気持ちを無視して自分勝手な行動を取ってしまった。……本当にごめん」
万里華はいきなり謝られたことに、軽い気持ちで大丈夫だよ~と返そうとして、止めた。それは優真の表情がいつにも増して真剣なものだったからだ。
「……私はさ、女神様に言われてある程度覚悟してたから、もし知られれば、喧嘩するかもしれないってそれなりに覚悟は決めてたよ。だって、優真がどれだけ保育士をしたかったか中学生の時からずっと見てたもん。……でもね、シルヴィちゃんは違う……」
万里華は知っていた。優真が暇を見つけては母園に通っていたことを、ずっと見ていたから知っていた。だから、この世界に自分が望む物がないと知った彼が絶望するというのは予期できた。
自分が彼の隣で支える。そうすれば、優真が例え優真が壊れたとしてもなんとかできると思っていた。だが、たった一つ誤算ができてしまった。
それは、自分がこの居場所を好きになってしまったことだ。
「ずっと優真の隣で、優真の夢を応援してきたあの子は、優真にあんな目を向けられてきっと辛かったと思う。苦したかったんだと思う。……だからさ、優真。シルヴィちゃんにもちゃんと謝ってあげてね。……例え他の誰かのお陰で前を向けたんだとしても、シルヴィちゃんがいたから優真はここまで来れたということを忘れないであげて。あの子には優真しかいないの。優真の隣しかあの子の居場所はないの。だからあの子は、優真の隣に居られるよう……頑張ってたんだよ……」




