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条件が揃わないと最強になれない男は、保育士になりたかった!  作者: 鉄火市
31章:実習生、スタンプラリーを行う
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「……本当にすまなかったな……」

「……いえ……こちらこそ取り乱してすみませんでした……」

 興奮したユリスティナはなんとか落ち着きを取り戻し、俺達は置いてあった丸椅子に座った。

「……とりあえず、万里華が来るまで待っとくか……」

 そう言うと途端にお腹が空いてきた。先程までは、皆を探すことに意識を割いていたため、あんまり気にしていなかったが、よくよく考えてみれば、朝食をとってない。最近ちゃんと食べてなかったことも相まって、余計にお腹が空く。


「……昼飯まだかな~」

 そう呟いた途端、隣に座るユリスティナが急に立ち上がった。

「それでは、マリカお姉様を待ってる間にシチューでもいかがですか? ユウマ様、最近食事も喉を通られてなかったご様子でしたので、心配しておりました」

 そう言うとユリスティナは、鍋から皿に何かを注ぎ始めた。そして彼女はどこからともなく匙を取り出し、黒いシチューと共に優真へと差し出してきた。

「これ……俺のために?」

「はい! ……お口に合うかはわかりませんが、ユウマ様のために一生懸命作りました。……よければ食べていただけませんか?」

「もちろん、喜んでいただくよ。ありがとな、ユリスティナ」

「そんな……お礼をいただける程のことはしてません」

「そんなことないってば、ちょうど朝飯抜きでお腹空いてたし、すっごく嬉しいよ!」

 ユリスティナは謙遜するが、俺からしてみれば天の救いと同等……いや、それ以上の代物だろう。まさかこのようなタイミングでユリスティナの手作り料理を食べられるとは夢にも思わなかった。なにせ、彼女がまともに料理をしている姿など見たことがなかったからな。


「それじゃあ、いただきます!」

 見た目は黒いが、ビーフシチューであるならば黒いのは当たり前だし、多少焦げていてもそれくらいは許容する。

 そんな覚悟を持った優真はシチューに匙を突っ込んだ。そして、匙ですくったシチューを口に運んだ瞬間、優真はいきなりぶっ倒れた。

「ただいま~……って優真!!?」

 ちょうどそのタイミングで戻ってきた万里華は、その現場を目撃した。彼女は驚いた声をあげ、椅子から倒れ落ちた優真の方に駆け寄る。

 万里華は優真を抱き起こし、意識を失った彼の頬を軽く叩き始めた。すると優真は、すぐに目を覚ます。


「はっ!? な……なんだこれ? 今一瞬やばい川が見えた気がする!」

 ヌメッとしたり、ゴリッとしたり、噛めば噛む程、苦味が増していき、何故か涙が止まらなくなる。

「……あはは……それね、ユリスティナちゃんが私達の補助無しでなにかを作りたいっていうから作らせた……ホワイトシチューらしいよ?」

 その言葉を聞いた瞬間、その料理の恐怖を改めて実感させられた。

 ……なんで、ホワイトシチューが黒いんだよ!!

 

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