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条件が揃わないと最強になれない男は、保育士になりたかった!  作者: 鉄火市
31章:実習生、スタンプラリーを行う
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「まさか、こんなことになるとはね~。シェスカとファルナには振り回されてばっかりだなぁ俺……でも、傷心の俺を思ってしてくれたんだよな~。こりゃ頑張らないとね」

 適当に廊下を歩きながら、俺は一人でそう意気込んだ。ただ、最初に誰のもとを訪れろなんて書かれていないため、何処へ行けばいいのか悩んでいた。

 シルヴィと万里華の二人には、無意識に冷たい対応をしてしまったのだろう。二人が俺に見せた寂しくて何かに怯えるような顔が頭に残って離れない。

 二人には出来るだけ早く謝った方が良いだろう。だが、昨日の件を考慮すると、ホムラの方に行くべきだ。

「……でも……よくよく考えてみたら、シルヴィと万里華の居場所ってわかんないし、ホムラの部屋もすぐそこなんだよな……」

 どちらにせよ、全員に迷惑をかけたのだ。一緒にいない限り、同時に謝るなんて出来やしない。それならば、一人一人に誠心誠意謝るのが俺のやるべきことなのだろう。


「……という訳で、ホムラの部屋前に着いたんだが…………あいつ、部屋開けっ放しでどこ行った?」

 中は電気が消えており、まるで泥棒が入った後と見間違えそうになるくらい部屋は荒らされていた。

 普通なら彼女の心配をするのだろうが、それはこの空間内でなければの話だ。

 ハナさん曰くこの聖域内には基本的に善良な者以外は入れないそうだ。パルシアスが入れてる時点で審査基準がガバガバな気はするが、泥棒なんかが入れるはずない。ましてや、大地の女神様が管理している場所でそんなことすれば、彼女直属の天使達が既に動いてるだろう。

(シェスカが壺を割ってからものの数秒で駆けつけたくらいだ。……おそらくホムラが散らかしたな……)

 部屋が開けっ放しというのは……ホムラだし、そのまま出てもおかしくないだろう。

「お~いホムラ~! 居たら返事してくれ~」

 一応声をかけてみるが、案の定返事はなかった。

 そんな時だった。


「どうかなされたのですか?」

 後ろから声がして振り返ると、そこには二人の天使が立っていた。格好は旅館の従業員みたいなもので、彼女達は俺に不審な目を向けている。

「ちょっとホムラを訪ねに来たんだ。……留守みたいだがな」

 俺は素直にそう答えるが、片方の天使が俺に侮蔑の眼差しを向けてきた。

「なんだ? お嬢を放っといたくせに、婚約もしていない女のところに行ってんのか? 聞いてた話と随分違う奴なんだな、このたらし野郎」

「こら、やめなさい! この方は仮にもお嬢の旦那様になられるお方ですよ! そんなことを面と向かって言うのは失礼です! 心の中で軽蔑するくらいにしなさい!」

「いや、あんたも充分失礼だから……」

 たしなめると見せかけて毒舌を吐いてくるあたり、この眼鏡天使も間違いなく俺を良く思ってはいないのだろう。


 堂々と目の前で悪口を吐かれれば、いくら温厚な優真でも怒る。まぁ、陰で言われないだけ、ましともとれるが、あまり良い気分はしない。

「それは失礼しました。私は、昨晩お風呂で気を失わせた者を再び襲うのかと思って、警告を促そうとしただけです。他意はありません。どうかお許しください」

「そんなこと言って許してもらえると思ってんだったら大間違いだかんな! あとそこ! ドン引きしない!! ったく……俺はただ、ハナさん達6人を探してるだけなんだよ! あんたらなんか知らないか?」

「お嬢をですか? ……お嬢でしたらメイデン様と共に温泉へと向かわれましたよ? マリカ様とユリスティナ様は、厨房を貸して欲しいと仰られたので、厨房におられるかと……こちらの部屋に住まわれている方とシルヴィ様の所在に関しては、私達も存じ上げません。探すのをお手伝いいたしましょうか?」

「いやいい! あんたらがついてくると俺の神経が磨り減りそうだ……とりあえずそこに行ってみるよ。情報ありがとね。……後それから、俺はホムラに手は出してないからな。変な噂広げたら……ね……」

 その笑顔を向けられた二人の天使は顔を真っ青にした。真っ青な二人を満足そうに見た優真は、襖を閉めて、廊下を再び歩き始めた。


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