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「それで……今日は何して遊ぶんだ? おままごとか? それともかくれんぼか?」
そう聞くとシェスカは首を振った。その表情は楽しそうで、なにかを企んでいるというのがとても分かりやすい。
「今日はね~お兄ちゃんには、すたんぷらりー? ってのをやってもらうんだ~」
「スタンプラリー? チェックポイントを回るあれか?」
「うん!」
無邪気な笑顔をこちらに向けてきた少女は、服のポケットからスタンプと手作りのスタンプシートを出してきた。
「これどうしたんだ? こんなの買った記憶無いんだけど……」
「うんとね~、マリカお姉ちゃんがこのスタンプ作ったの」
「……作ったって……そういえばよくユリスティナと万里華が二人と一緒にラジオ体操してたな……それ用か?」
かわいい熊のスタンプを見ていると、前に家の中に居続けるのは健康に悪いということで、万里華がラジオ体操を始めたのを思いだした。
「うん! マリカお姉ちゃんから借りてきたの! それでね~こっちは、ファルナお姉さんと一緒に作ったんだ~」
「そうか。二人ともすごいな~」
褒めてほしそうにしているシェスカとファルナの頭を撫でる。
「えへへ~お兄ちゃんに撫で撫でされるの好き~」
「嬉しいこと言ってくれるじゃん……さて、昼食前には終わるよう張り切って回るか!」
「頑張ってね、お兄ちゃん!」
彼女達の頭から手を離して出発しようとした瞬間、シェスカがいきなり応援してきた。
「……シェスカは一緒に行かないのか?」
「うん! 私とファルナお姉さんは、お兄ちゃんのこと待ってる係~!」
「え~俺だけで回るのかよ……っ!? やるから! ちゃんとやるから泣くな、シェスカ!」
「……うん、じゃあルールを言うね!」
シェスカに泣き落としされては、嫌と言えない自分が情けなくなってくるが、今更やると言った言葉を撤回する気はない。
やるからには、シェスカやファルナが満足する結果を持ってきてやる。
「えっとね~お兄ちゃんにはね、お姉ちゃん達のところを回ってもらうの」
「シルヴィ達の?」
「うん。お姉ちゃんね、お兄ちゃんに嫌われたって泣いてたもん。だからね。お姉ちゃん達と仲良ししてきて!」
シェスカの説明を要約すると、シルヴィ達のところに行って仲直りしてこい……ということなのだろう。スタンプシートには6つの枠があり、幼い子ならではの読み辛い文字で、相手からスタンプを押してもらわないとダメと書かれている。
どうやら、二人には迷惑をかけたうえに、こうしてお膳立てまでしてもらったようだ。
「おし! シェスカのお願いとあっちゃやらなくちゃいかんよな! それじゃあ行ってくるよ」
「「行ってらっしゃ~い」」
二人に見送られて、俺はこの家の中にいる6人の元に向かった。




