31-1
先日の件から一夜が明け、俺は廊下に出ていた。
正直に言おう。超寝坊した。
既に時刻は11を過ぎており、窓から見える太陽がかなり高い。いつもであれば、6時辺りで起きれるのだが、最近眠れなかったこともあり、昨日は久しぶりにぐっすりと眠れた。
「……それもこれも、全てホムラのお陰だな……」
結局、天使達に全て任せてきたため、お風呂でのぼせてしまったホムラがあの後どうなったのかは知らない。……本当は俺のせいでのぼせたんだから、俺が介抱すべきだったのだろう。……だが、それを理由に彼女の許可なく着替えさせたりと色々するのは……やっぱり俺には出来ない。
一応、保育士を学ぶ過程で得た知識を使って、簡易的な処置はしたが、とりあえずタオルは剥がなかったとここに弁明しておこう。
(……まぁ、治療特化の天使もいることだろうし……多分大丈夫だろう……とりあえず、昨日は無理して付き合わせたんだし、ちゃんと謝っとくか………)
そんなことを考えながら、彼女の部屋に向かって歩を進めていると、目の前に頬を膨らませたシェスカが尻尾をふりふりさせているファルナと共に立ち塞がった。
(あ……これは10段階の7……いや、8くらいか? 結構ご立腹だな……)
彼女の怒りが雰囲気でひしひしと伝わってくる。これは、前に服を買ってもらえないことに拗ねた時と同等くらいの怒りだろう。下手したら少しの間、口すら聞いてもらえないかもしれない。
「おはよう、シェスカ、ファルナ……どうしたんだ、そんなに怒って?」
ファルナは笑顔で「おはよう、お兄さん」と返してくれたが、シェスカは更に怒ったような顔になった。
「お兄ちゃん! もうこんにちはの時間なんだよ! シェスカと遊ぶって約束したのになんで遊んでくんないの!」
まぁ……理由は予想通りだった訳だが……普段よりも怒ってる気がする。おそらく俺を起こしても、起きなかったんだろうな……。
「ごめんな、二人とも。ちゃんと二人と遊ぶからさ。とりあえずお腹空いたから朝食を先に……」
その続きを言おうとすると、シェスカの怒りが9にシフトチェンジしそうになっていた。
「というのは嘘! ご飯は後で皆と食べればいいもんな! シェスカとファルナを待たせちゃった訳だし、一緒に遊ぶか!」
焦ったように訂正した瞬間、シェスカは満面の笑みを向けてくる。
(……こりゃ一杯食わされたかもしれないな……ご飯食べさせてもらえなかったけど……)
目の前でニコニコと笑みを浮かべているシェスカを見て、俺は心の中でため息を吐くのであった。




