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30-9


「だからさ、保育士っていう仕事が無いってんならダンナが作っちまえばいいじゃん」

「いや……無理に決まってるだろ。……俺は実習をやっている最中に死んだんだ。あっちの世界で言う実習生でしかない。保育士になるための勉強はしてきたが、保育士にもなれていない俺じゃ、そんなこと出来やしないさ……」

「…………」

 俺が自分じゃ無理だと彼女に言うと、彼女は俯いて、お湯の中に戻った。だが、その目は諦めた様子ではなかった。

 姿勢を正した彼女は、俺の方に真剣な目を向けた。

「ダンナ……私は今まで何になりたいかなんて考えたこともなかったんだ。あの国に生まれ、親に売られ、毎日毎日強制労働の日々……この傷だって、監督していた奴に鞭でやられた時につけられた傷だ。運がよくて失明しなかったけど……一生消えない傷を、私はあの国につけられたんだ……」

 ホムラは悔しそうな顔で、前髪で隠していた傷を指でなぞる。

「……ダンナが来る前は、アオイやキョウと一緒に、いつかチャイル皇国に行ってちゃんとした信仰者になろうって約束したんだ。……でもさ、私は二人と違う!! 後方で指揮を執るアオイや、調査を主な仕事としているキョウとは違う!! 私はいつも、先陣をきって、多くの敵を倒してきた。多くの血を浴びてきた私に、二人と共に歩む資格なんてない!! 私に……夢を見る資格なんてない!! ……そう思ってたんだ……」

 彼女の頬を涙が何度も伝っていき、彼女の悲しい気持ちが伝わってくる。

「……でも、こんな私に対して、『救世の使徒』の皆は優しく接してくれる。……私達が守ってきた環境下で、言葉もまともに喋れないくらい幼い子ども達が、私に笑いかけてくれる。

 ……ダンナの夢、私はいいと思うよ。……私だって子どもが好きだ。あの子達の笑顔を見るのが好きだ。あの子達は、私にも変わらない笑顔を向けてくれる。……血や、仲間の死に顔を見るのはもううんざりだ!! ……だからさ、ダンナ……私は保育士になりたい……」

 

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