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条件が揃わないと最強になれない男は、保育士になりたかった!  作者: 鉄火市
4章:実習生、子どもを捜索しに行く
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4-22

 ……ぶつかった。彼がいた場所にミストヘルトータスが突っ込んだ。しかも、彼は避けようともしなかった。運良く生きていると望むことすら、憚られる程の攻撃だった。


 …………なぜ止まった?

 万に一つも勝ち目がないと諦めたのか?

 最後、彼が発した覇気は、炎帝と呼ばれた男とよく似ていた。

 あれほどの覇気を発したにもかかわらず、諦めてしまったというのだろうか?

 せっかく体を張って助けたというのに、……これでは、何のために左腕を失ったのかわからなくなる。

 ……前を見たくない。

 目を開けば、Sランクモンスターに蹂躙された若者の死体があるのだろう。

 無惨な死体に決まっている。


「……ウグァァァ」

 呻き声が聞こえた。

 明らかに人間のものではない呻き声。しかし、他のモンスターは先程彼が発した覇気で全員逃げ出していた。一匹もいなかったのは、霧が晴れているお陰でよくわかる。

 ……では、いったい誰が?


 ハルマハラはゆっくりと目を見開き、その信じられないような光景を目の当たりにする。

 先程よりも凄まじい回転が加えられ、威力の増したミストヘルトータスのスピン攻撃。それにもかかわらず、目の前にいる青年は片手一本で受け止めていた。


 Sランクモンスターの一撃を素手で受け止めるなんて芸当、世界に20人と存在しないSランクの冒険者でも、なかなか出来はしないだろう。

 ましてや片手で受け止めることが出来るのは、上位5人のやつらだけだろう。

 だというのに、それをやってのける青年にハルマハラは恐怖を覚えた。


 ◆ ◆ ◆


 回転が止まり、ミストヘルトータスが四肢や顔、尻尾といった部位を甲羅から出したのを見て、優真は甲羅から手を離す。

「…………くたばれ、化け物」

 その言葉が口から発せられた直後、地面を蹴った優真は、拳を振りかぶり、ミストヘルトータスの顔面を殴ろうとするが、それは、急いで体を全て引っ込めたミストヘルトータスによって空振りに終わる。

 しかし、優真の攻撃はそれで終わりではなかった。


 甲羅の頑強さに自信があるミストヘルトータスは、このまま、時が過ぎ去ることを望んだ。あの一撃を片手で凌がれては、もう打つ手がなかった。しかも、さっきの一撃は今までと比べ物にならない程の火力だった。

 しかし、どんなに強い攻撃をされようが、この甲羅が有る限り、自分を傷つけることなどあり得ない。なにせ、この甲羅は数千年の間、かすり傷一つついたことがない代物だからだ。

 ここにこもってさえいれば、そのうち向こうが先に倒れる。


 しかし、その考えは甘かったと言うしかなかった。

 優真は何の躊躇いもなく、甲羅に向かって拳を構えた。足に力を込めて、一瞬でミストヘルトータスとの距離を詰める。

 刹那、優真が渾身の一撃を放つ。

 

 優真の一撃はミストヘルトータスを、その自信や誇りごと木っ端微塵に粉砕してみせた。

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