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30-5


「…………はは……そうだよな。この世界に保育士なんて無いんだから、こっちの世界に住むホムラが保育士を知ってる訳無いじゃないか……なんでそんな当たり前なことにも気付かなかったんだろうな」

 ホムラの当然を聞いた瞬間、唖然とした顔をホムラに向けて喋らなくなってしまった優真が、焦ったように謝ってくるホムラの前で急に笑い始める。


 日本での常識が通用するとは限らない。それが異世界だ。俺と彼女は、別の世界で生まれ、育ち、そして偶然か必然か、保育士の無い世界で出会った。

 だから彼女が知らなくて当然なんだ。

「いいよ、教えてあげる。そもそも保育士ってのは、児童福祉施設で児童の保育をする人だよ。子どもの成長の中でも重要な時期に関わる仕事で……俺がとてもやりたかった職業だよ」

「……? なんかよくわからんけど、子どもの世話をする仕事かなんかか? 親とかとは違うのか?」

「違うな。親と違って、金をもらって他人のお子さんを預かるんだ。責任重大で大変な仕事なんだぞ~」

「はぁ。……要するにダンナはその保育士になりたかったけど、その保育士って職業がこの国にはなかったってことか……」

「この国っていうか、どうやらこの世界には無いんだそうだ。まぁ、向こうでも親が育てるって習慣が昔は主流だったらしいし、そう考えるとこっちに無いのも仕方ないのかもな……」

「……ダンナはそんなに保育士になりたかったのか?」

「まぁな……この保育士になりたいがために、色んな人に迷惑かけちゃったし……なにより、俺は子どもが大好きなんだよ」

「他の似たような仕事……で代用出来るんならこんなに悩んでないんだよな……」

「ああ……」

「……どうしてそんなになりたいんだ?」

「ん?」

「いやさ、ダンナってかなり強いし、S級の冒険者だし、失礼だけどユリスティナ皇女と婚約してるなら金の心配なんて必要無いだろ? それに、ここに住んでればこんな生活できる立場にあるんだ。要するにダンナって、無理して働く必要無いんだろ? だったら、その保育士ってのにどうしてもなりたい理由があるんだろ? 私は、それを聞いてみたいな……」

 その言葉に俺は口を閉ざした。

 よくよく思い出してみれば、この話は誰にもした記憶がない。決して聞かれなかった訳ではない。万里華に何度も聞かれたが、その度に話すのを回避してきた。

 でも、今更隠しだてするような話ではないだろう。

「……わかった。話すよ」


 それは俺の過去に起こった出来事、父さんの死で心を閉ざしていた時期、俺が死のうと思っていた時の話だ。


 次回、優真の過去が明らかに

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