30-1
ちゃぶ台を囲んで、座布団の上に座った女性が3人。各々の前には、湯気のたった緑茶が入った湯飲みが置かれている。
「それで? 彼は計画に乗ってくれるのか?」
先程までずっと読書に興じていた銀髪の少女が、エメラルドグリーンの長髪を不機嫌そうにいじる幼い少女に声をかけた。
「……それがさ~。考える時間をくれ……だって。普通さ~主神の願いなら、どんな願いでも聞くのが眷族ってものなんじゃないの~?」
「それはしょうがないんじゃないかしら?」
不機嫌そうな子どもを司る女神にそう言ったのは、飲んでいた湯飲みをちゃぶ台の上に置いた茶髪の女性だった。その女性は、閉じていた目をゆっくりと開いて、子どもを司る女神の方に向ける。
「彼は今すごく傷ついてるのでしょう? それも貴女があの世界に保育士という仕事が無いことを内緒にしていたせいよね? そう簡単に頼みを聞いてもらえるなんて虫が良すぎるわよ」
「う~~……でもさ、母様。次の『神々の余興』まで時間がないんだよ? なんとしてでも優真君に優勝してもらわないと、父様との約束も……」
「こら、昔の口調に戻ってるわよ? せっかく神になるのを許してもらえたのですから、もう母と言って甘えるのは駄目よ。対等な同盟関係という立場になれたのですから、ダイちゃんでしょ?」
「え~~!! 良いじゃん! ここは鉄ちゃんとミハエラしかいないんだよ!」
「だ~~め。娘を時に厳しくするのも母としての勤めなの。ねぇ、こーちゃん」
「う~~……ダイちゃん……」
仕方なく大地の女神が指定してきた呼び名で呼ぶと、いきなり大地の女神が飛びかかってきた。
「きゃ~~!! かわいいわ~~!!」
「ぎゃーっ! くっつくな~! ミハエラが見てるだろ~!!」
「いいじゃないの~ハナちゃんもユウタン君に取られちゃったし~これからはこーちゃんを愛でるのよ~!!」
「だからダイちゃんって呼ぶのは嫌だったんだ~!! 助けてくれ、鉄ちゃん!!」
抱きつかれて頬を擦り付けられている子どもを司る女神は、鉄の女神に助けを求めるが、鉄の女神は我関せずという風に、ヘッドホンで音楽を聴きながら本を読んでいた。
「この薄情者~~!!」
子どもを司る女神の嘆きは、虚空に響くだけで終わった。
次回は優真の方に戻ります。




