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「優真ーーーーっっ!!」
体に強い衝撃を受けた。体は衝撃に耐えられず、鮮血を撒き散らしながら、数メートル吹き飛ばされたのち路上に倒れた。
一瞬何が起きたのか混乱したけど、すぐに俺があの車に轢かれたことを理解できた。そして理解した瞬間、全身に痛烈な痛みが走る。
血がお腹の辺りから出てきて痛い。
(……たくない)
頭を打ったのか頭が痛い。
(死にたくない!)
涙を目尻に浮かべた万里華が駆け寄ってきて、空を見ていた俺の視界に入ってくる。
(まだ死にたくない!)
先程の車を運転していた女性が視界の端で何度も頭を下げて謝ってくる。
(嫌だ。死にたくなんてない!)
まだ何も出来てない。人生だってこれからいろいろ楽しいこともあっただろうし、彼女を作ったこともない。そんな未練しかない人生の終幕がこんな形なんて嫌だ!
生きたい。死にたくなんてない!
まだ保育士資格すら取れていないのに!
親孝行だって出来てないのに!
母さんの美味しいご飯だって食べ足りない。
由美の高校受験合格を祝ってやれてない。
……万里華にこんな泣きじゃくった顔をさせたくなんてなかった。
……死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。
意識を保つのが限界に達した時、自分が死ぬとわかって涙が目から零れた。
そして顔が自然と横を向いた。
それが何の意図をもってのものだったかわからない。だが、霞んでいく視界の中に俺が纏めて突き飛ばした園児3人の姿があった。3人とも痛かったのか泣いているし、道路に尻餅をついていた。……でも、元気そうだった。
…………あぁ生きていてくれて良かった。
そして、彼の意識は闇に飲み込まれた。