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条件が揃わないと最強になれない男は、保育士になりたかった!  作者: 鉄火市
4章:実習生、子どもを捜索しに行く
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4-20

 10倍のブーストは、あばらが折れているせいもあって、なかなかしんどかった。

 しかし、しんどいからと言って止める訳にはいかない。

 今、こうしている間も、ハルマハラさんは俺を信じて戦っている。

「【ブースト】攻撃力10倍!」


 そう叫んだ時、自分の中にある何かが、昂っていくのを感じると同時に、とてつもない虚脱感に襲われる。

 だがーー

「……賭けは…………俺の勝ちだ!」

 ふらふらと焦点の合わない目を、霧を吹き飛ばしているモンスターへと固定する。その言葉を発した直後、優真はおもいっきり地面を蹴った。


「いきますっ!!」

 優真の合図が聞こえた瞬間、ハルマハラは作戦通り後方へと移動し、前線から離脱する。

 優真の右手に込められた威力は、先程までとは比べ物にならないものだ。

 全力の拳は、油断していたミストヘルトータスの首に直撃した。

 優真の発生させた風圧が、周りの霧を吹き飛ばし、その直撃をもろに食らったからか、ミストヘルトータスの表情が苦悶で歪んでいるのが見えた。

「やったか!」


 しかし、その言葉を発した直後、ミストヘルトータスの目が紅く光った。

「グルルルルルガアアアアアア!!!」

 ミストヘルトータスは耳をつんざくような咆哮を発し、森に存在していた霧を全て吹き飛ばした。

 その咆哮を至近距離でもらったせいで、一瞬気を失いかけて、回避行動が遅れた。

 咆哮を上げた直後に肉体を全て隠したミストヘルトータスのスピン攻撃が、隙だらけの優真を襲う。


「しまっーー」

 目の前が真っ赤な鮮血で満たされた。

 繋がっていない左腕が地面に落ちる音が鮮明に耳へと届いた。

 勢いに流されて、地面に体を叩きつけられ、痛烈な痛みに襲われる。

 背中に激痛が走って、優真は呻き声を上げた。


 ………痛い。なんで俺がこんな目にあわなきゃならないんだ。

 ………【ブースト】の重ねがけですら届かない。

 自分が弱いのがもどかしい。俺がもっと強ければ、今の一撃で倒せていたはずなのに。


 体を起こした優真が、目を見開くと、そこには、失った左腕の出血を苦しそうに押さえるハルマハラの姿があった。

 今のスピン攻撃が当たる直前に、身を呈して俺のことを守ったのだ。

 刺々しい甲羅が回転して、彼の腕を切断した。

 しかし、ハルマハラはそんな絶体絶命の状況下で冷静な判断をし、腕を切られた勢いを利用して、自分の身と優真の身を地面に叩きつけた。

 結果、必然のように迫る死を、ハルマハラは左腕と背中のダメージだけで、回避してみせた。


 不安そうな眼差しをハルマハラに向ける優真。それを見て、ハルマハラはなぜか小さく笑った。

「……貴方が無事で……良かった」


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