表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
条件が揃わないと最強になれない男は、保育士になりたかった!  作者: 鉄火市
4章:実習生、子どもを捜索しに行く
36/970

4-17

 この時の俺は、Sランクモンスターの足を2本切り落とし、転倒させたことで調子に乗っていた。

 まだ相手を倒したわけでも、逃げ切れたわけでもない。

 それなのに、気を抜いてしまった。

 完全に油断していたとしか言いようがなかった。


 前足を斬られたミストヘルトータスは、目を尖らせ、自分の足と顔の部分を全て殻の中に閉じ込めた。

 次の瞬間、ミストヘルトータスは、霧を噴射しながら、高速回転し始めた。

 霧の濃度が増していき、まともに前を見ることもままならなかった。絶対に目を離してはいけない相手だったはずなのに、油断して見失ってしまうという失態を犯した。 


 さすがの俺でもその状況がまずいことくらい瞬時に理解できた。何か攻撃してくると思い【ブースト】を使用して、咄嗟に防御力と耐久力をはねあげた。

 しかし、その油断していた腹部に、しなる鞭のような尻尾をおもいっきり叩きつけられた。

 その一撃をまともに食らった結果、俺は轟音を轟かせながら、木に叩きつけられた。

 悲鳴を上げることもままならない程の攻撃。

 その勢いは、ぶつかった木にめり込むほどの威力だった。


 日本で居眠り運転の車にひかれた時よりも痛かった。

 そんな威力の攻撃を受けたのに、生きていられるのが、不思議でならなかった。

 意外なことに、腹から血は出ておらず、あばらが何本か折れた程度ですんだ。

 しかし、樹木にめり込んでしまったせいで、身動きできない。なんとか、脱出を試みようとしたが、体が思うように動かせないせいで、失敗に終わる。

 目の前で、ミストヘルトータスが死の光線を放つために、エネルギーを溜めているのがわかる。


(……もうだめかな。……ごめん二人とも、……俺そっちに戻れそうにないみたい)

 一筋の涙が頬を伝う。

 最後に見たシルヴィとシェスカ(二人)の顔が脳内を過る。


 ミストヘルトータスの口から光線が放たれ、後方にある木ごと根こそぎ灰にした光線。

 その光線は、優真のめり込んでいた木も消滅させてしまった。


 ◆ ◆ ◆


「…………まったく世話をかけさせないでくださいな。こちらも怪我をしていて辛いのですから」

 左腕で俺を担ぎながら、木から木へと移動する人物が前を向いたまま、俺にそう言ってきた。

 その人は、ミストヘルトータスから少し離れた位置に移動して、安全そうな木に怪我を負った俺を座らせた。


(…………誰? ……というか、なんでまだ生きてるんだ、俺?)

 霧の影響で見にくかったものの、それでも村人とは思えない佇まいや、しゃべり方から初対面だと思った。

 その人が、右手に持つレイピアを一振りすると、俺とその人の周りにあった霧が一瞬にして消え去った。

 そしてなぜか、その霧が戻ることはなかった。

 何が起きたのかはよくわからなかったが、次の瞬間、その人は懐から出した謎の液体が入った小瓶を出すと、俺の口に無理矢理突っ込んだ。

 いきなりなんの説明もなくそんなことをされれば、混乱するのも当たり前だし、正体不明のおっさんから、正体不明の液体を飲まされるというのはまずいし、この液体も不味い。

 吐き出そうとすると「吐いたら殺す」と威圧的に言ってきたので、その顔に恐怖を感じ、黙って何度も頷き、その液体を飲み干した。

 すると、脇腹の痛みや、動かせなかった四肢も動かせるようになった。

 これって、いわゆる回復ポーションというやつなんだろうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ