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結局、ライアンさんが、シェスカを引き剥がした。
シェスカは駄々をこねるが、優真が優しく頭を撫でてやると、すぐにおとなしくなった。
「すまないユウマ君。俺には、こんなことしか出来ないが、逃げ切れたら笛を鳴らそう。もしも、笛の音が聞こえたら、後のことなど考えないで全力で逃げなさい」
ライアンさんの言葉に俺は素直に頷いた。
◆ ◆ ◆
「じゃあな、シルヴィ、シェスカ。……元気でな」
その言葉を聞いた瞬間、目の前にいるユーマさんが、亡くなったお父さんと重なった。
自分を助けるために、死んでしまったお父さんとお母さん、顔は全然似てないし、体格も戦士であるお父さんの方が良かった。
それでも、彼の纏っている雰囲気が、なんとなく似ている気がした。
幼いシェスカと私を置いて死んでしまった人と、同じことを言った彼。
また……私の前から大切な人が消える。
「そんなの嫌っ! お願い! いなくならないで! ユーマさん!!」
ライアンに肩を掴まれながらも、シルヴィは行かないでと嘆く。声をあらげ、自分に出来る最大限の抵抗を行おうとする。
しかし、優真の悲壮感漂う背中は、その抵抗むなしく、遠ざかっていく。
ライアンおじさんに無理矢理引っ張られる。
ガルバスさんが「諦めろ」と肩を掴みながら言ってくる。
行かないでほしい。ずっとそばにいてほしい。せめて、助けてくれたことのお礼を言わせてほしい。
しかし、優真の姿は非情にも霧で見えなくなってしまう。
シルヴィが必死に抵抗をしても、大の大人二人におさえられれば、非力な少女では太刀打ちできなかった。
結局、優真が振り返ることは、ただの一度もなかった。




