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切羽詰まった様子で俺がそう言ったからか、ライアンさんにも何かしらの意図が伝わったらしく、ライアンさんも、御者台に乗っていた二人の服を引っ張って無理矢理下ろした。
全員下ろした後、ライアンさんのとった行動は、他の皆からは異常に見えただろう。
ライアンさんは、馬を叩いて、馬車を霧の中へと走らせたのだ。
しかし、俺たちはすぐに知ることとなる。その行動がなければ、多くの人間が死んでいたであろうことにーー
馬が誰も乗っていない荷馬車を引いて走った後、その地点の霧が晴れた。
道中俺たちを襲ったのと同様の光線が、その馬車を襲ったのだ。
近くの木を凪ぎ払い、霧を吹き飛ばし、線上にあったものを全て焼き払った光線は、俺たちの油断しきっていた空気まで吹き飛ばした。
「おいっ! 小僧、ライアン! 今のは一体どういうことだ!」
「そんなのは俺が聞きたいくらいだよ! ユウマ君! なんで君はあれが来るってさっきも今もわかった?」
二人がこちらに答えを求めてくるが、俺だって確信があった訳じゃない。
「いやまぁ、一発目は、俺の能力が危機察知的なのだからですかね? まぁ、今のがわかったのは、霧です」
「霧?」
今の光線で辺りの霧がはれたことで、二人の驚いた顔がくっきりとわかる。
「子どもたちを助けた場所には、霧があまり発生していませんでした。払われた霧が元に戻ることもありませんでしたし、最初に襲われた時や今の方がよっぽど濃かったですよ。そして、捜索に出ていたメンバーの中で消えてしまったのが馬車に乗っていたメンバーだけ。要するに、この霧を発生させているモンスターの狙いは、馬車だと思ったんです。さすがに馬か車のどちらが狙われてるかまでは、わからなかったですがね」
思ったことを素直に答えたが、それでも疑問が一つ残っていた。何故あの馬車に関しては、今の今まで、攻撃されなかったのか、と。
「……なるほど、実際に今の光景を見ると、疑いようもないな。……それでどうする?」
近くにいたガルバスさんは、俺に問いかけてくる。
(どうするもなにも……このモンスター、人には興味ないのか、すぐにどこかへ行くみたいだし、じっとして、このモンスターが離れた時に村へ帰れば多分大丈夫じゃね?)
しかし、その楽観的な考えは、すぐにかき消されてしまう。
「グウォオオオオオオオオオオ!!」
その咆哮は、鼓膜にダメージを与えてくる程、大きかった。
耳を押さえていても、衰える気がしない。地響きが辺りに鳴り響き、そのモンスターが近付いてくるのがわかる。
今の咆哮が原因で子どもたちが泣いているのが、聞こえてくる。しかし、俺たちはそれどころじゃなかった。
一体何メートルあるのかわからない。白い霧の中に黒く巨大な影が映る。
再びの咆哮、辺りに密集していた霧が払われ、そのモンスターは、俺たちにその巨体を晒した。




