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「もう大丈夫だ……ぞ!?」
俺は振り返って、全てが終わったことを告げるとシルヴィに抱きつかれた。何がなんだかわからずに困惑している俺を、子どもたちが冷やかしてくる。
「……怖かったんです。ハルマハラさんもどこかに行っちゃって、……私だけで子どもたちを守ることになって、ここがどこら辺かもわからないし、テンペストハウンドは出るし、死にたくないけど、……もう、自分を犠牲にして子どもたちを逃がすしかないと」
俺の服を握りしめ、抱きついてくる彼女を、そっと抱き寄せた。
これは、あの時俺が選んだ選択を彼女はしようとしたということだ。状況は少し違うが、それでも自己犠牲とは簡単に出来ることじゃない。
……本当に、彼女が俺と同じ結末にならなくて良かった。
「もう大丈夫だ。よく頑張ったなシルヴィ。お前がいなかったら、子どもたちは無事じゃいられなかっただろうな。お前が頑張ってくれたお陰だ。ありがとう」
シルヴィの頭を撫でながら、泣いているシルヴィに胸を貸した。
◆ ◆ ◆
(…………これは、現実なのか?)
ライアンは、目を見開き、今起きた現象を信じられずにいた。
時間にして1秒もかからずに絶対絶命の状況が一変したのだ。
いつも、昼食の配膳を手伝ってくれるひ弱な子ども程度にしか思っていなかった。
しかし、その考えは改める必要がある。
今目の前で子どもたちに泣きつかれている男は、一瞬でテンペストハウンドたちを殴り飛ばした。
能ある鷹は爪を隠すとはよく言うが、まさかこれ程の実力だったとは。
しかし、その力を村の子どもやシルヴィのために使ってくれたのは疑いようのない事実。
(ふっ、ユウマ君には、本当に感謝してもしきれないね)
「ユウマ君、シルヴィちゃん、急いでここから離れよう! テンペストハウンドがこれだけとも限らない。何より、さっきの光線を放つやつにも警戒しなきゃならねいからね。再会を喜ぶのは後にしよう」
ライアンが言った言葉に頷いた優真。
シルヴィは、ライアンの言葉で我にかえり、頬を赤く染めながら、その場から慌てて飛び退いた。




