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条件が揃わないと最強になれない男は、保育士になりたかった!  作者: 鉄火市
4章:実習生、子どもを捜索しに行く
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4-4

 霧の中を進んでいる俺は、ふと一つの違和感を覚え、隣のライアンに声をかける。

「……ねぇ、ライアンさん。さっきまでこんな濃霧だったっけ?」

「………いや、予想以上の濃霧だな。まったく前がみえん。こりゃ何か出たな」

「出た?」

 首を捻った俺を見て、一瞬驚いた顔を見せるライアンさん。しかし、その顔はすぐに納得したような顔になる。

「ユウマ君はこの世界を知らないって言ってたな。……この世界において、ごく稀に、異常気象が発生する。そこには、天候の神々が関連してるんだ」

「………天候の神ね」

(どうせろくでもないことばっかりしてるんだろうな。あいつに似て)

「神々が求める者は眷族。天候の神々は他の神よりランクが高い。そして、彼らは己の力を他の神へと誇示する目的を含めた狩りを始める」

「……狩り?」

「化け物を解き放つんだよ」

 その言葉を聞いた瞬間、優真の中で嫌な予想が生まれた。


「化け物は一定時間の間、傍にいる他の猛獣だろうが、人間だろうが関係無しに襲う。見込みのありそうな人間を見つけるのが、神々にとって一番の目的だからな。もうすぐ、あの時期だしなーー」

 その瞬間、一切の予兆もなく放たれた死の光線が、優真たちの馬車を襲った。


 ◆ ◆ ◆


(っぶね~‼️)

 間一髪でなんとか、その光線を避けられたのだが、危うく死ぬところだった。

 ………ライアンさんが重すぎて。


「いったい何が起きたってんだ?」

「わかんないです」

「俺はさっきまで馬車に乗ってたはずだよな?」

「本当に感謝してくださいよ。俺がいなかったら今頃、あの馬車と同じ結末になってましたよ」

 指の先にある馬車は、もはや、その形状を保てていなかった。馬車を引く馬は脚を残して消えている。

 衝撃的な映像だった。


 では、何故俺たちは無事だったのかというと、俺が持つ特殊能力【勇気】が発動したからである。

 1分間の時止め、いきなりで戸惑ったが、タッチパネルに

『時が動き出せば、あなた方二人は死にます。急いで、回避行動をするのが身のためです。馬車から一旦出て、回避してはいかがでしょうか?』

 と書かれていたのでは無視するなんて選択肢はなかった。

 ライアンさんをなんとか担ぎ、運んでいたのだが、体が馬車から出た瞬間、馬車が吹っ飛び、俺たちも風圧で吹っ飛んだ。

 結果的に俺とライアンさんは、無事ではあった。


(あれ? この能力って俺が認識してなくても発動したっけ?)


『否、その認識は正確ではありません。優真様の能力【勇気】は、己の認識範囲内で攻撃された場合に能力が強制発動します。例え見えていようがいまいが、そういうのは関係ありません。

 P.S女神様は現在寝ておられるので代わりに天使ミハエラが優真様のサポートを務めさせていただきます』


(天使にも俺の考えていることがわかんのか? というかあの女神、人が死にそうな時に寝てんのかよ!)

 女神の寝顔を想像すると無性に腹が立ったので、俺はその考えを頭からだして、目の前にある危険に集中する。

(しかし、どうする。この霧の中じゃ、敵を見つけ出せないぞ)

『ご安心ください。敵は、あなた方を殺したと勘違いし、そのままどこかへと行ってしまいました』


(ということは……戦闘終了?)

『はい』


 そういうことならありがたいが、要するに他の生存者を狙いに行ったということだろうな。

 シルヴィさんたちも危険みたいだし、急いだ方が良さそうだ。


「急ぎましょうライアンさん。とりあえず、行方不明者の捜索を最優先に、さっきのモンスターとの戦闘は回避で!」

「わ……わかった。先を急ごう。確か婆さんから聞いていたあの子達のいる場所は、確か………あっちだ」

 指差した先は、先程光線が放たれた位置だった。


「……ライアンさん、彼女たちが生きてるってもちろん信じますよね?」

「ああ、もちろんだ」

「では、別の場所へ向かいましょう。ライアンさんの話によると、護衛の人はかなり腕利きっぽいので、多分同じ場所にいるとは思えません」

「じゃあ子どもたちがどこにいるのかわからないじゃないか!」

「わかりますよ」

「………え? いったいどうやって?」

 動揺しているライアンさんの顔は、自信満々に言った俺に驚いているのだと察することができた。


「勘です。子どもを見捨てるようなやつが、神様名乗れる訳ないですからね」

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