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 大きく深呼吸をして息を整えた俺は、園長の許可をもらって保育園の園内に入った。


 園長へ挨拶をしてから、提出しなければならない書類を渡し、案内の先生に連れられて子どもたちの待つ部屋に向かう。


「今日はすみれ組に入ってもらいます。それから、すみれ組は今日遠足があるので優真君にもそれについてきてもらいます」

「わかりました」


 その他にも連絡事項を伝えられ、覚えなければならない内容の多さに、とっているメモのページがすぐに埋まってしまった。

 ……字が汚なすぎて、解読に苦心させられそうだ。


 すみれ組担任の先生から言われたことを、全て書き終えた俺は、部屋に待機させられた。

 部屋には朝の挨拶を待っている子どもたちが、部屋にある遊具で遊んでいた。

 この年長児たちのいる部屋が今日お世話になるすみれ組だった。

 子どもたちの俺に対する対応はそれぞれ異なっていた。

 初めて見た俺に興味津々で近寄ってきたり、俺の方をちらちらと何度も見てくるだけで近寄ってはこない子どももいた。遊びに没頭していて、こちらを見もしない子もおり、多種多様の一面を見せた。

 実習日誌を書くために子どもたちの行動はよく観察する必要があった。


 ◆ ◆ ◆


 朝の挨拶も無事終了した。

 少し気恥ずかしい挨拶で子どもたちの注目をうまく自分に誘導できた。子どもたちの顔を見ていると昨日の晩に何度も練習した甲斐があったと思える。腕にはめた自作人形を使って腹話術を用いた挨拶、なかなかよかったと他の先生にも褒められた。

 子どもたちは予想通り……いや、予想以上の可愛さだった。

 

「優真くん準備はできた?」

「あ……ごめん、もうちょっと待って」

「も~、早くしないと先生たちに怒られちゃうよ」

 頬を膨らませながら可愛く注意してくる幼なじみの万里華、彼女にもう一度「ごめん」と謝ってから急いで遠足へ行く準備を済ませる。


 彼女は、金橋万里華(かなばしまりか)という俺の保育園時代からの友人だった。

 知能は少し低いが、その明るい性格と周りを巻き込む行動力で高校時代から人気者だった。

 保育士を目指し、共に同じ大学へと進み、この母園で一緒に実習へ来ている。


 今回の遠足は年長組と年中組の子が行くとのことで年中組に入っていた万里華も共に行くことになっていた。

 準備を終えた俺を急かす万里華に続き、俺たち二人は集合場所に向かった。時間的には余裕で間に合っていたのに、万里華が十分程時間を勘違いしていたせいで、まだ先生と数人の子どもしかいなかった。

 待っている間、先生に遠足での注意事項を聞きながら子どもたちが集合するのを待つ。

 万里華はというと既に自分の担当しているクラスの子どもたちと仲良くなっていた。

 彼女のそういう一面は尊敬できる点だと常々思う。


 出発する時刻になり、先生が遠足での注意事項を子どもたちへ伝えると、俺たちは遠足の目的地である公園へと向かった。

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