16-17
女神に好き勝手言われてるのに、何も言い返せない。
否定する気も失せてしまう程の、圧倒的な威圧感。息をするのも忘れてしまいそうになる圧迫感。
そして、何よりも彼女の言葉一つ一つが、自分を惨めにさせてくる。
シルヴィの気持ちを考えていなかったなんて思いたくない。だが、シルヴィの気持ちを考えているように見えて……俺は結局自分のことしか考えていなかったんだと思い知らされる。
「……なぁ優真君……考えても見てくれよ。もしも君と同じ気持ちだった場合、シルヴィちゃんは私の提案を蹴った筈だ。彼女は例え短い時であっても君を独占したいという理由で私からの提案でも拒めた筈なんだ。……それなのに私の提案に彼女は乗った。それがどういうことかわかるかい?」
わかる訳がない。いや、自分の答えに自信が持てない。俺はシルヴィの気持ちを何一つ理解出来てなかったんだ。そんな俺が、シルヴィの気持ちを当てられる気がしない。
「……はぁ……君は本当に幸せ者だねぇ……彼女は君の愛が多数の女性に向いてでも君と一緒にいることを望んだ。自分がどういう立場なのかわかっているはずなのに……例え君の一番が自分じゃなくなったとしても君と一緒にいることを望んだんだ。彼女にはこのまま人間として暮らしていき、普通の素敵な男性と出会って、そして結婚し、子どもを作り、彼女の夢でもある家族で平和に暮らしていく……ということもできた筈なんだ……そうして生きていけば彼女はきっと自分だけを愛してもらえる人生を歩めたんだ。……ちゃんと責任をとってやりなよ」
「…………ああ」
立ち上がった俺は顔を赤く染めたシルヴィの前に行く。その時には既に、今まで発されていた威圧は感じなくなっていた。
「……シルヴィはさ……俺がそういう人になってもいいのか?」
我ながら酷い質問だと思った。それでも彼女に否定してもらいたい気持ちもあった。
だが、俺の気持ちに反して彼女は首を縦に振った。
「私はユーマさんの傍にいて、その大きな愛を少しでも私に向けてもらえればそれだけで充分です。私の気持ちが決定打になるというなら、一生のお願いです。そのお話を受けて欲しいです。私を一生あなたの傍に置いてください」
シルヴィの言葉は、俺の今までがどれだけ自分勝手だったかを思い知らせる内容だった。
だが、それで良かったのかもしれない。完全に手遅れなことになってしまう前に知ることができたのだから……。
「…………わかった……」
シルヴィに向かってそう言った俺は、女神の前に行き自分の意思で跪いた。
「今まで自分勝手なことばかり……本当に申し訳ありませんでした。女神様の意見を慎んでお受けします」
「よろしい!」
女神は怒る前と同じくらいの笑顔でそう言った。




