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部屋にいた俺のもとに、女神が訪れたのは少し前のことだった。
万里華が目を覚ましたことと、話があるから、万里華のお見舞いをした後、自分の部屋に来てほしいとだけ伝えられて、女神は部屋から出ていった。
万里華の部屋に寄ったことで、既に短い針は書かれた9という数字を越えていた。
2階の一室、数多くある客室の中でも一番豪華な部屋の前にやって来ていた。
豪華とはいっても、他に比べて多少調度品の数が多いというくらいで、そこまで違いはない。
一番高そうな部屋を頼む。とふんぞりかえって言う女神に、シルヴィがこの部屋を用意したのだった。
綺麗好きなシルヴィが、毎日部屋を掃除してくれていたこともあり、女神もこの部屋をすぐに気に入ったそうだ。
ちなみに、万里華はこの部屋の隣を使っている。
俺は部屋の扉をノックして、中から返事を待つ。
「入っていいよ~」
数秒後、中からそう返事があったため「失礼します」と言ってから、扉を開けて部屋の中に入った。
部屋の中には、設置されていたソファーに座るシルヴィと女神の姿があった。
「シルヴィも呼ばれていたのか?」
俺は純粋に疑問を抱いたため、そう聞いたのだが、シルヴィは答えにくそうにしていた。
「優真君、万里華ちゃんとはちゃんと話してきたかい?」
「それが、よくわからないんだけど、あんまり話そうとしてはくれなかったな……まぁ、俺の落とした石鹸が原因だし、怒ってるのかもな……」
「ふ~ん……まぁいいや。来たばかりで悪いんだけど、時間ももう遅いし、早速本題に入ろうか。悪いけど、優真君用の椅子はないから、立って聞いてくれるかい?」
女神に促されるまま、俺は彼女達の前に立った。
シルヴィが席を譲ろうとしていたが、女神がその行為を止めた。別に立つのが苦だった訳でもないうえに、シルヴィを立たせる気もなかったため、その行為に文句はなかった。
目の前にいる二人はいつもの二人に見えた。だからこそ、女神の次に放った一言は俺に多大な衝撃を与えた。
「優真君……君にはシルヴィちゃんの他にも多くの女性と関係を持ってもらいたい」




