16-7
注文を終えた万里華は出来上がるまでの間、近くに設けていたベンチのところで待つことにした。
ファルナにはカスタードとクリーム、チョコがのったクレープにし、自分のは優真が好きと言っていたクレープにした。
留守番している二人の分も頼んだが、できれば優真の分も買いたかったな~と思う。
まぁ、内緒ということらしいし、自分が女神様に逆らえる訳ないので、おとなしく5人分だけ買った。
そんなことを考えていた時だった。
「こんにちは」
「え……? こ……こんにちは」
青色の高貴なローブに身を包み、フードを被っていた少女がいきなり挨拶してきたことに戸惑いつつも、万里華は挨拶を返す。
150にも満たないであろうファルナと同じくらいの身長から、10代の少女だと思ったが、次の質問にそれどころではなくなった。
「……その子……シェスカさんとおっしゃるのですか?」
いきなり、シェスカの名前を尋ねられれば、警戒するのもやむを得ないだろう。
だが、敵意を感じないのは、隣のファルナがおとなしく睨んでいるだけなのでわかった。
猫耳と尻尾をローブで隠している少女の目が、話しかけている少女の後ろにいる少女に向けられているのが見えた。
しかし、二人の顔はよく見えない。その声はどこかで聞いたことのあるような気がしたが、思い当たらない。
とりあえず、答えるのは得策じゃない気がしたため、適当にごまかそうとした。
「うん! シェスカはシェスカだよ~!」
しかし、本人の手によって、シェスカの名前が二人にばれてしまった。
勝手に名乗るなとシェスカを責める訳にもいかず、最初っから注意しておけば良かったと万里華は自分のミスに頭を抱えてしまう。
「そうなのですか……。良いお名前ですね。……では、わたくし達はこれで」
「え? ……名前だけ?」
万里華の咄嗟に出てしまった声で、去ろうとしていた少女は再び万里華達の方を振り向いた。その際、少しフードがめくれ、金色の髪がチラリと見えた。
「はい。可愛らしい声でしたので、近くで聞きたかっただけですよ」
(えっ? ……へ……変な人だな~)
万里華が混乱していると少女は「ごきげんよう」と言ってどこかへ行ってしまった。
◆ ◆ ◆
人通りの少ない道を歩いていた青いローブを着ている二人は、先程の3人からだいぶ距離を取ったのを確認してから、閉ざしていた口を開いた。
「……メイファン、貴女は彼女達のあとをつけてちょうだい。わたくしは3人と共に帰ります。住所とあの方の存在が分かり次第、報告にきてちょうだい」
「かしこまりました」
メイファンと呼ばれた少女は、主に丁寧なお辞儀をしてから、彼女の指示に従って姿を消した。
その直後、体格の良い3人の男が現れ、少女にかしずく。
「……ようやく手掛かりを掴めましたわ……」
そう呟いた少女は、その3人を引き連れて、通りを歩くのであった。




