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16-1


 外は晴れ渡る空模様だというのに、この家に住んでいる二人の間に流れる空気はどんよりとしていた。


「は~。よりにもよってシルヴィちゃんに言っちゃったのか~」

 頬杖をつきながら溜め息をつく緑髪の幼き見た目の少女と反省したように項垂れている黒髪をボーイッシュな髪型にしている女性は椅子に座りながら机越しに座っている。

「……すみません。まさかこの世界で保育士のようなことをしていた彼女が知らないとは思ってなかったんです」

「だからって、秘密事を簡単に言ってしまうのは感心しないな」

「……申し訳ありません」

 その反省している姿を見た緑髪の少女(子どもを司る女神)は、もう一度溜め息を吐いてこの場にいるもう一人の人物を見た。

 その視線の先には栗色の髪をツインテールにしている少女がエプロン姿で朝食を作っている。

「シルヴィちゃんさ、昨日天使マリカが口を滑らせて言った内容を絶対に、優真君にしちゃ駄目だからね! 神との約束だよ!」

 調理している鍋に視線を集中させていたシルヴィだったが、急にかけられたその言葉で、敬愛している女神の方を向く。

「は……はい! わかりました!」

 そしてシルヴィは、その言葉の重みを知り、改めて絶対に言わないことを誓う。

「わかってはいると思うけど、自分の信仰している神との約束を破ったら、背神行為になるからね。優真君と一緒にはいられなくするからね」

「き……肝に銘じます!」

 その脅しのような言葉に顔を青くするシルヴィを見て、万里華は心の中で謝ることしか出来なかった。


「まぁ今回に関しては完全にこちらの落ち度だしな~。代わりに何か一つお願いを聞いてあげるよ? もちろん私にできる範囲であればね」

「そ……そんな……私なんかが女神様にお願いをするなんて……恐れ多いです」

「……そう? まぁいいや。何かお願い事ができたら言ってよ。私の考えが変わらないうちに早くね~……それと、この話はもうおしまい。優真君がそろそろ起きてくるよ」

「「え?」」

 二人が驚いたような声を上げた瞬間、自分達のいるリビングの扉が開かれ、目を擦る白髪の少女を連れ、栗色の短髪の少女を抱き上げている黒髪の青年が眠そうに入ってきた。

「3人ともおはよう。……早いねぇ」

 そんなことを言いながら自分の椅子にシェスカを抱えたまま座る優真に、万里華が詰め寄る。

「ゆ……優真!? 大丈夫なの!?」

「……え~っと……何が?」

 未だに寝ぼけているのもあるだろうが、優真は本当にわかっていない様子だった。


「何がって数日は目覚めないかもって……」

「そんなこと言ってないけど?」

「……そ……そういえば」

 万里華は昨日の出来事を思い出すが、確かに彼はそんなことを一言も言っていなかった。

 そのことを思い出した万里華はその情報をくれた少女の方を向いた。

「だ……だって、霧のモンスターが現れた時は確か1週間くらい目を覚まさなかったから……てっきり今回もそれくらいかかるもんだと思ってました」

「もしかして【ブースト】の反動で数日間動けないと勘違いしてたってこと?」

「……違うの?」

「……まぁ数倍程度なら少しの間だるくなるって症状はあったし……シルヴィが言ってたミストヘルトータス戦は……確かに1週間くらい起きれなかったな」

「ちなみに今回は何倍までやったの?」

「漆の型を使った時に攻撃力とか防御力を90倍くらいにしたな。……確かになんで俺今無事なんだ?」

「単純なことだよ? 優真君は既に人間やめちゃってるからね~。ぶっちゃけた話、最初から眷族として認めてはいたけど、覚醒に至るまで数十年はかかると思ってたね」

「あれ? 眷族って全員がこんなばかげた力を持ってんじゃないの?」

「そんな訳ないだろ? 眷族にだって2種類の者がいる。優真君みたいに覚醒して偉大な力を得る者。または不老の力を得るだけの者。まぁ前者は後者に比べると圧倒的に少ないかな。でも、不老の力を利用して己を鍛える者も少なくはないから、優真君より強い後者の者がいる……訳ないか。身贔屓かもだけど、【ブースト】と【勇気】を持っている優真君ならそう簡単に負ける気しないし……」

「過剰評価し過ぎ……俺なんか女性のハナさんにも勝てる気しないわ」

(そりゃそうだろうね。あの子3番目だし……まぁ、あの(ひと)も優真君の化け物っぷりに気付いて、後ろ楯になるって言ってくれたし、結果オーライでしょ)


 女神の不穏な笑みを見て、またなんか企んでいるのかと憂鬱になっていると、シルヴィと万里華が朝食を運んできたため、この話はここまでとなってしまった。

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