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「ね~お兄ちゃ~ん、遊んで~」
栗色の短い髪、目の前にいる少女と同じ髪色をしている目のくりっとした可愛らしい女の子が話し掛けてきた。
この子は、シェスカと言ってシルヴィさんの歳が離れた妹だ。17歳のシルヴィさんより一回り幼い5歳のシェスカ、人懐っこい性格で、こうしてよく、俺を遊びに誘ってくれる。
俺が一人閉じ込められた家の中に、ちょくちょくやってくる。俺が子ども好きだったのも相まって、すぐに仲良くなった。
「ごめんなシェスカ。お兄ちゃんは今、ライアンおじさんのお手伝いに行かないといけないから、一緒に遊べないんだ。また今度遊ぼうな」
「え~、いいじゃん遊ぼうよ~、……そうだ! お兄ちゃんお手伝いなんかさぼっちゃったら?」
名案でも思いついたような顔になっているが、そんなことしたら、今まで築いたものがパーだ。絶対できる訳ない。
「う~ん、でもさぼったら、君のおばあちゃんに怒られるからな~」
「う~、シェスカと遊んだら、ばあちゃにお兄ちゃんが怒られるの? ……それはやだな~」
「だったら、一緒にライアンおじさんのお手伝いをする? 終わったら遊べるし」
「うん! シェスカも手伝う~」
キラキラとした瞳でそう言ったシェスカは、意気揚々とライアンおじさんの家へと向かう………実は、保育所に給食を届けにくる手伝いだから、ライアンさんここにいるんだけどね。……というか、さっきから近くの木陰で寝てるんだけどね。
◆ ◆ ◆
「いつもありがとね、ユウマ君。ユウマ君が手伝いに来てくれてからだいぶ楽になったよ」
「いいんですよ。俺もやりたくてやってるんで。それに今日は、小さな助っ人もいますからね」
「そうだったそうだった。シェスカちゃんもありがとね」
「うん。シェスカもお手伝い頑張るよ!」
張り切るシェスカの頭を俺が撫でると、彼女は嬉しそうな表情になりながら、こちらにすり寄ってきて、もっとして~と言ってくる。
「はいはい。お手伝い頑張ったらな」
婆さんのやっている保育所は、いろんな年の子が一緒の部屋で遊んでいる。
広い室内には15人くらいの子どもがおり、その中で、シルヴィさんともう一人の女性が子どもたちの遊び相手になっている。
いわゆる縦割り保育という環境だった。
しかし、この部屋には、子どもたちの遊ぶための遊具はあまりない。
では何で遊んでいるのかといえば、女の子はままごと、男の子は、おいかけっこや、ちゃんばらごっこなどである。それぞれ楽しそうに遊んでいるが、やっぱり少ないと感じてしまう。
脚の高いテーブルと椅子、角の尖った家具。あんまり言いたくないけど、もう少し環境を整えるべきだと思う。
「こんにちは、シルヴィちゃん、昼食持ってきたから婆さんを呼んでくれるかな?」
「え? あ……もうそんな時間なんだ。わかりました。今呼んできますね」
シルヴィさんは、ライアンさんの言葉で時計を見ると、その場から立ち上がった。
時計に刻まれた数字は、昼食の時間であることを示している。
「やぁ、こんにちは」
「……え……あ……ごめん」
精一杯の笑顔を浮かべて挨拶したのだが、シルヴィさんは戸惑った様子で、俺の横をすり抜けていった。




