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「【ブースト】発動!」
キョウは自分の目の前まで迫った獣の腕が、その放たれた言葉と共に横へずれたのが見えた。
「よ~っすキョウ君じゃん。こんなとこにいたら危ないぞ~?」
「ユウマ様!?」
直後に現れたのは、自分が心から敬愛している女神様の眷族だった。
とても戦闘向きとは思えないようなカジュアルスタイルで現れた彼の服はぼろぼろに裂かれて肌が露出していた。
それでも、この方が来てくれたらなんとかしてくれるような気がした。
「悪いんだけど悠長に話している余裕は無いからさっさと逃げてくれる? それからこいつに攻撃はしないよう、その手に持ってるトランシーバーみたいな無線機で全員に連絡取って避難してくれ」
「なっ!? 我々もやれます! 俺達は絶対に足手纏いになんかなりません! だから一緒に戦わせてください!」
戦力外通告されたことが悔しくて、キョウは自分にまだ価値があることを、優真に訴えようとしたのだが、優真はその訴えに対して首を横に振った。
「気持ちは嬉しいんだが……俺とお前達じゃ、目指すべき結末が違うんだよ。俺にとってはお前達もあの子も、どっちも救うべき対象なんだ……だからお前達を巻き込めない。というか、あの子を攻撃しないでもらいたいんだよ。だからおとなしく言うことをきいてくれよ」
「……あ……あなたは、あんな化け物でさえも救うとおっしゃるのですか? ……わかりました! そういうことでしたら我々は全力で避難致します!」
「うんよろしく~。……あ……そうだそうだ。一つ言い忘れてたことがあったわ」
「なんでしょうか? ユウマ様の言葉なら何だって聞きますよ!」
「そうか? ……なら、次にあの子と会ったら、化け物と言わないであげてくれ。本当は傷つきやすくて、優しい子なんだ。ただ、今は悲しいことが重なって暴れているだけなんだ。だから、あの子を受け入れてあげてくれ。難しい頼みかもしれないが、よろしく頼む」
「……え? いえ……わ……わかりました! それではご武運を!」
「うん、ありがとう。…………じゃあ怪我とかしないでよ~」
優真がキョウの言葉にこたえているタイミングでいきなり放たれた白虎の横薙ぎ。しかし、優真はそんな攻撃を歯牙にもかけなかった。
突然放たれた横からの凪ぎ払いを片手で防いでみせた優真は、驚くキョウに優しい微笑みを向け、彼らが見えなくなるまで、彼女の腕を掴んだまま、もう片方の手を振っていた。
「はぁ……キョウ君達に心配かけないよう平静を装ったけどうまくいったかなぁ……ったく。お前も少しは我慢できないのか? 普通こういう時って逃がし終えるまで待ってくれるじゃん。……とか言っても、あんまり意味ないんだろうけどさ。……さて、そろそろ始めるとしますか」
優真はため息を吐き、そんなことをぼやくと、彼女の腕を振り払い、足に力をためて跳躍しようとした。
そして【ブースト】を更に発動させようとした時だった。
「ちょっと待って~!」
という声と共に、二つの人影が近付いてくるのが見えた。




