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3-3

 俺がシルヴィさんや婆さんが住むカルナ村に閉じ込められてから2週間の時が経った。

 あれから、どうなったかというとーー


「お~い、ユウマ君こっち手伝ってくれないかな?」

「わかりました~、こっちの手伝いが終わったらすぐに行きますね」

 俺はほとんどの村人と仲良くなっていた。


 ◆ ◆ ◆


 この村に来た当初は本当に誰とも口を利かなかった。

 孤立した一軒家に住まわせられ、食料を毎日持ってくる。着る物も与えてくれた。

 3日も意地を張り続けたのだが、よくよく考えてみれば、ここに送りつけた女神からの方がよっぽどひどい仕打ちだったなと思ったし、これからここに住むなら、意地張って印象を悪くするより、ここは村人の信用をかち取った方が良いと考えたのである。


 同年代の人とは仲良くなるのは苦手でも、逆に高齢者とか、幼い子どもと仲良くするのは、得意中の得意だ。

 信用なんて仲良くなっていけば自然と生まれるものだ。

 元々保育士は、信用がなければやっていけない仕事だし。

 なにも悪いことをせず、真面目に取り組む。信用を得るための近道はあるが、地道な努力は後々、いい結果を生むことになると思う。

 村人たちがやっている仕事の手伝いをかってでると、最初は警戒していた村人たちも、雑用を真面目にやっていく俺の姿を見て、徐々に心を許すようになっていった。

 ただ、一番難しいと思っていたおっさん連中、彼らとは仲良くなるのに一週間もかかってしまった。

 あの人たちは、俺のことをすぐにでも殺せるようにと俺を警戒していたからな。

 正直言って仲良くなるのは無理だと思っていたが、一緒に酒盛りしたら、仲良くなれた。


 それから案外、この村の人たちはいい人たちだとわかった。

 彼らが俺を殺そうとした理由は、シルヴィさんを狙っている人だと思われたからだと仲良くなったじいさんから聞いた。

 要するに、仲間を守ろうとしただけなのだ。

 ただ、一つだけ疑問がある。なんで彼女を狙うと殺される対象にならなきゃならないんだろうか?

 だが、それを俺は未だに聞けないでいる。そのことを聞こうとすれば、またあんな結末につながるような気がしたから、何も聞けなかった。


 それと、当の本人(シルヴィさん)にはあの日以来、距離を置かれている。


 あの時、なんであんなこと言っちゃったんだろう。冷静になってみれば、あれは俺を庇ってくれたんだとわかる。

 そんな相手にあんなひどいことを言ったんだ。見限られても仕方ないよな。


 ちなみに、俺を殺すことをやめたあの婆さんは、この村で村長的なポジションにいた。

 本当の村長は、病で床に伏して動けないでいるため、代理なのだそうだ。

 あの婆さんはこの村にいる子どもたちを預かる保育士のようなことをしていた。

 その保育所の仕事をシルヴィさんは手伝っていた。

 その楽しそうな姿を見ていると、日本にいた頃を思いだしてしまう。

 俺の本心的には、せっかくだから彼女たちの手伝いをしたいと思うのだが、あの日の罪悪感がそれを許してはくれなかった。

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