15-19
「優真君! 君はまた相手を見誤ったみたいだね。かっこつけて突っ込んでぼろぼろになるなんて……いい加減少しは学んだらどうだい? ……まぁ、そんなところが面白くて私は気に入ってるんだけどね」
「……この状況で皮肉言いやがって……今は女神様にかまっている余裕が無いんだけど……」
鉄格子で倒れそうになる体を支えながら、優真が反論すると、とどめを刺すために、ファルナが再び優真に襲いかかってきた。
優真はその突っ込みを間一髪のところで回避するが、床に転がるだけで、体中を痛みが走る。
小さく呻き声をあげると、鉄格子に突っ込んだファルナは優真の方を睨む。
「痩せ細った弱々しい少女を見て自分ならなんとかできると思っていたみたいだけど……今回は無理だ。一旦檻の中から出てきなさい!」
「……そうしたいのは山々なんだけど……唯一の扉にファルナが張りついてたら……無理じゃね?」
優真の方を睨んでいたファルナは、優真から逃避の思考が垣間見えたことにより、本能に従って、ゆっくりと扉の前に移動していた。
「……どうしたらいいと思う?」
「…………そんなに張りつかれたら……まぁ自力で頑張るしかないね……」
いろいろと文句の言葉が頭の中に浮かんだが、そんなことを言っている場合ではなかった。
突っ込んでくる体勢になった少女の姿が見えて、倒れたままの体を腕で支えて立ち上がろうとするが、体がいつもより重く感じられて、うまく立てない。
視界もどんどん霞んでいって、視界に捉えていたファルナの姿も徐々に見えなくなってしまう。
【勇気】もない。【ブースト】もない。
能力の使えない自分がここまで弱いとは思っていなかった。
強くなれたと思っていた。……でも自分は、自分の力だけでは一人の少女を助けることも出来ない。
もどかしい。それがわかっていても、【勇気】と【ブースト】があればと考えてしまう自分がなんとももどかしい。
「ダンナ危ない!」
ホムラの声が耳に届き、優真は目の前までファルナが迫っていることに気付いた。
もう駄目だと優真が思った瞬間だった。
「もうやめてっ! ファルナお姉さん!」
その声が聞こえた直後、優真は違和感を覚えて、殴られる前に閉じた目を恐る恐る開いた。
そこにはあと少しのところで停止している拳と、叫んだシェスカの方を見ているファルナの姿があった。




