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(……さすがにこれ以上一方的にもらい続けるのは本気で死にかねないなぁ……ここらが潮時かな……)
胸の辺りを普通の人間なら死にかねないような威力の一撃をもらった優真は鉄格子に背中を打ちつけられたことで、考えを切り替えた。
(多少痛い目にあってもらって、落ち着くまで何度も話し合うしかないか? ……もう方法もこれしか思い浮かばんし……こうなりゃやるしかないか……)
それはできることなら、取りたくない手段だった。
子どもに手を上げるなんて保育士として最低の行為だ。例えどんな子どもでも優しく包みこんであげられるような保育士になりたいと思っている優真からしてみれば苦痛の決断だった。
だが、意地を通してこのまま自分が死ぬようなことになった場合、それこそこの少女の未来は絶望的なものになる。
だが、優真はその決断をした瞬間、体に力が入らなくなってしまった。
殴られすぎた優真の体はとうに限界を迎えていたのだ。
だが、そんなことはお構い無しに襲いかかってくるファルナ。その目は鋭く尖っており、優真のことがもうわかっていない様子だった。
ファルナは力いっぱいに地面を蹴って跳躍する。
脱力感に襲われながらも、優真は目の前で体をよじる姿を見て、腕で防御の姿勢をとる。
直後にくる横からの強い衝撃。顔を腕で防いでみせた優真だったが、その威力に押され、痛々しい音を響かせながら再び鉄格子に叩きつけられた。
優真の口から吐き出された紅い血がシルヴィの顔を青ざめさせる。
そんな彼女の隣にシェスカと同じくらいの身長になっている少女がいつの間にか立っていた。
「まさかこんなことになるとはね……さすがの私でも思っていなかったよ……」
「女神様! お願いですユーマさんを助けてあげてください! このままじゃ……このままじゃ死んじゃう……」
「うん……いくら眷族として覚醒した優真君でもこのままじゃ危ないね……お父様に怒られるかもだけど……大切な家族を見殺しにはできないな」
泣きながら懇願してくるシルヴィに向かってそう言った彼女は、檻の方に歩み始めた。




