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ホムラの後をついていきながらしばらく進んでいると、一つの牢屋に案内された。
そこには両腕と両足を枷で固定され、目隠しまでされている白髪の少女が入っていた。
「…………ファルナお姉さん?」
その言葉がシェスカの口から呟かれた通り、その少女は確かに南大陸へと帰ったはずのファルナだった。
「……いったいどういうことだ?」
その疑問に答えたのはホムラだった。
「この子を知ってんのかダンナ? だったら話が早いや。この子はベラキファスという将軍に捕らえられていた少女の一人なんだ」
「ベラキファスだと!? ……だが、あいつは……」
ベラキファスといえば、俺達が暮らしていた村からシルヴィを拐い、シルベスタさんを処刑した張本人だ。
あいつの姿を思い出しただけで腸が煮えくりかえしそうになる。
しかし、あの状況を思い出した瞬間、一つの考えが浮かんだ。
「……まさか、俺が村に行ってる間に襲われたのか?」
だが、その答えを知っている者はこの場にいなかった。
「出港した船を襲撃したベラキファスは、この子の他にも数多くの獣人族を捕らえてた。私が行った時にはベラキファスが何故か虫の息だったし、交戦の跡も見受けられてあんまり抵抗はされなかった。……彼女も一応ファルナと名乗ってくれたんだが……私の他にやって来た仲間達に怯え始めたかと思うと、数人を襲い、大怪我を負わせて、逃亡をはかったんだ。だが、いくら捕まっていたとしても、仲間を大怪我させた相手を逃がす訳にもいかず、私が捕らえるしかなかったんだ。……怪我をさせても、回復力が異常に高いし、暴れまくるからこういう結果になった。……なんだその手は?」
ホムラの視界にこちらに伸ばした優真の手が映る。
「理由はわかった。だから鍵を持っているんなら早く渡してくれ」
「いやだめだ! いくらダンナでも危険すぎる! いくら知り合いとは言っても今のあの子は暴れる獣なんだ!」
「……あの子に枷をかけた理由は仕方なかったからなんだろう。だが、シェスカにあの姿をこれ以上見せられない。ファルナをあのままにしておけないんだ」
その真剣な目に気圧され、ホムラは懐から2本の鍵を取り出した。
「…………ダンナ。悪いんだが、牢屋を開けたら一度閉めさせてくれ……逃げられでもしたら被害がーー」
「別に構わない」
優真は2本の鍵を彼女から受け取ると、1本で牢屋を開け、外にいるホムラに投げ渡した。
鍵を受け取ったホムラが鍵を閉めたのを確認した優真は彼女の目隠しを取り、枷の鍵を外した。
そして次の瞬間、世界の時が止まった。




