15-12
「あの~」
次の話に入ろうとしていると、シルヴィが申し訳なさそうな表情で手を挙げた。
「少し気になったんですけど……ホムラさんが言っていた救世主って誰のことなんですか?」
シルヴィの質問にあまり深く考えていなかった俺も、その存在が気になった。
「救世主様は、苛酷な労働を強いる大人達からバートラム博士と共に我々を救ってくださった素晴らしい方なんだ! お顔は拝見したことはないし、すぐに何処かへ行ってしまわれたが……私達に子どもを司る女神様という存在の素晴……らしさを説いてくださった方だ……」
最後の方に自信が持てなくなっているの絶対女神様におちょくられたからなんだろうな……可哀想に……信仰していた存在がこんなんじゃ自分の信仰に疑問を抱いても仕方ないだろうな。
「何考えてるかはお見通しだって言ったよね優真君? 私を前にしてこんなん呼ばわりとは失礼なんじゃないか?」
「ごめんね神様……俺ってば正直すぎるから心の中を偽れないんだよねぇ」
「こんにゃろぉ……帰ったら覚えとけよ……」
女神のやつがなんか言ってる気がするけど無視でもいいだろ。どうせ飴でも与えときゃ機嫌も良くなるだろ。
「うわぁぁん! マリちゃ~ん! 優真君がいじめるよ~!」
女神は右隣に座っていた万里華に泣きついてみせる。
「はいはいどうせ嘘泣きなんでしょうけど付き合ってあげますよ。……にしても、優真にしては珍しいよね……他人に対して冷たいのは……」
隣でシルヴィはおろおろしているが、泣きつかれた万里華の方は普通に対応してみせた。
「女神が何もしなけりゃ普通に接するんだけどなぁ……むしろ女神、俺の反応見て楽しんでんじゃね?」
「まぁ……そうだろうけどね……優真は優しいからどんなに面倒でも無視しないもんね」
「そんなことないよ~」
万里華が俺のことを褒めてくれた瞬間、けろっとした顔で女神が手を横に振りながら否定してきた。
俺自身否定しようとは思っていたけど……なんだろうな……人に言われるとすごい腹立つ。
「……まぁいい……それでバートラムさん、救世主と呼ばれた人物はどんな方だったんですか?」
優真はこれ以上話が脱線するのを止めるために、バートラムにその事を聞くことにしたのだが、バートラムは話し難そうにしながら、その重い口を開いた。




