15-9
「ホムラ君……彼らを私の研究所に案内するけど問題ないね?」
「は……はい! 一応私も行くけどいいか?」
「へ~~そんなに優真君と一緒にいたいのかい?」
「ち……違う! 私はただ……」
「ただ?」
「はいそこまで~ごめんね~ホムラちゃん。あんまり気にしなくていいからね~」
女神がにやにやしながらホムラを追い詰めていくのを止めたのは万里華だった。
万里華は暴れる女神を無理矢理引きずっていった。
「女神様、いい加減にしてください! それから、これ以上優真に変な虫をくっ付けさせるのやめてもらっていいですかね!」
万里華は優真達から少し離れた場所まで女神を連れてきて、誰にも聞かれないよう小声で話し始めた。
「別に楽しいからいいじゃん! 優真君だってきっと色んな女の子を侍らせて遊ぶ方が好みに決まってるよ! そう! これは言うなれば優真君ハーレム計画! 彼を喜ばせるために協力したまえ!」
「それって女神様が遊びたいだけなんじゃ……」
「……優真君の心が読める私に何の根拠もないとでも?」
「……あるんですか?」
「いやないけど」
「やっぱり適当なんじゃないですか!」
「だがよく聞いてくれ……これはシルヴィちゃんにも知ってほしいからこっち来て」
引きずられていた女神は、万里華の腕を振りほどくと優真の近くにいたシルヴィを呼んだ。
優真は女神の「シルヴィちゃんだけ!」という続けて放たれた言葉で訳のわからないまま、その場で待機することにした。
「えっと……何かご用でしょうか?」
「いいかい? 私や優真君はこれから先……永遠の時を生きていく。そして、その時を普通の人間であるシルヴィちゃんやシェスカちゃんでは生きることができない。……それは悲しいことだ……でも私の目的さえ叶えばそんな悲しみとはおさらばだ! だから……優真君のハーレム計画に協力してくれ!」
「えっ!? ……それってつまりユーマさんと関係を持つ女性を増やせってことですか?」
シルヴィは予想外な内容に一瞬声をあげるが、女神が口の前に人差し指を立てたことで声を潜めた。
「いいや……そういうことじゃない。入っていいかどうかは私が決めるよ。誰でもいいといって増やしすぎると逆効果だからね……要するに私の認めた相手を容認して欲しいということなんだ……頼む」
そう言われたシルヴィは、即答することが出来なかった。自分の信仰する神からの頼み事は絶対だ。にもかかわらず、女神は自分に選択する権利を与えてくれた。
「………………わ……私は……ユーマさんとこのまま関係を続けてもいいんでしょうか? 彼に相応しくない私はお払い箱になるんでしょうか?」
その不安気な表情と震える声で聞かれた質問に目の前に存在している女神は即答した。
「そこは安心してくれ! 君たちはお似合いだと思ってるし……君から優真君を奪うなんて残酷なこと、私にはできないよ」
その優しく、自分を安心させてくれるような言葉でシルヴィの覚悟は決まった。
「それでしたら……私も受け入れます」
そう言ったシルヴィの表情は少しだけ嬉しそうだった。
「三人共まだなのか? 早く行くぞ?」
シェスカを背負っている優真に呼ばれ、3人は優真の後に続いてバートラムの研究所に向かった。




