15-7
挨拶をしながら差し出された手は俺の視界に映らず、ただ、その目を縦に斬られたような傷痕だけに向けていた。
目は両目とも見えているようで、ただ、傷痕だけが残っているだけみたいだ。
その視線に気付いたのか、ホムラと名乗った少女が哀しい表情を見せた。
「醜い顔で眷族様の目を汚して悪かったな……今から布で巻くから待っててくれ」
「いや……醜いとは思ってないから……布は取ったままでいい。今までそんな傷を顔に負った少女を見たことなかったから驚いただけだ。こちらこそ気を悪くさせてすまなかったな」
俺が彼女に謝ると、彼女は驚いたような顔を向けてきた。
「どうした?」
「貴方のように私の顔を見て、そう言わなかった者は初めてだ……眷族とはそんなに心が広いもんなのか?」
「あ~違う違う……優真君が特別な観点から見ているだけだよ……そうやってすぐに人が一番欲しい言葉を簡単に当てちゃうから修羅場になるんだぞ! 少しは反省しろ!」
「意味わかんねぇよ……あれは基本無視でいいから…………どうした? 顔真っ赤だぞ?」
「ふぇあっ!? 違う違う……決して醜くないと言われたことや布は取ったままでいいと言われたことが嬉しかった訳じゃないぞ! 違うからな女神様!」
「へっへ~ん……甘いよ~ホムラちゃ~ん。私は基本的に信仰者の心も読もうと思えば読めるから君の心が丸わかりだよ~。誤魔化したって無駄無駄~」
「そ……そんなでたらめ言って私を動揺させようったってそうはいかないぞ!」
「年は16、身長は148で~、スリーサイズは上から74・60・78、体重は~」
「あああああ!! やめろ~! やめてくれ~! わかった! 信じる! 信じるからそれ以上は勘弁してくれ~!」
(なんでそんなことまで当ててんだよ……)
「そりゃあ優真君……私は神様なんだよ? 大抵のことはなんだってわかるさ。なんなら彼女のもっと恥ずかしい秘密を教えてあげようか?」
「やめてやれよ」
「ホムラちゃんはね~実は処ーー」
「あああああああああ!!」
なんか新しいオモチャを見つけた子どもみたいにいきいきしてんな。……そろそろ止めてあげないとめんどくさいことになりかねないな。
そう思った俺が動こうとした時だった。
「今日はいつもより騒がしいね~。いったい何があったんだい?」
街の方から白衣を着た男がそう言いながらこちらに歩み寄ってくるのが見えた。




