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3-1

 二人が住んでいる村に行く道中、シルヴィさんから、この国のことをいろいろと聞いた。

 まず、この森はスティルマ大森林という場所らしい。

 パルテマス帝国に存在するこの世界最大の森林とのこと。

 上位ランクのモンスターも、生息しているから、武器も持たずに入るのはやめた方がいいと言われた。

 そして、スティルマ大森林の中でも比較的王都に近い位置に存在するのが、彼女たちの住んでいる村、カルナ村なんだそうだ。

 他にも多くの村があるらしいのだが、人を食う部族もいるとのことなので、あまり適当にうろちょろしない方がいいと言われた。


「そんな恐ろしい部族がいるのに、シルヴィさんたちはよく平然と暮らせるね?」

「え? ああ……まあ、近づかなければ、危険じゃないですし。彼らのテリトリーに侵入しなければ問題ないですよ。それから、シルヴィでいいです」

「あんまり、名前を呼びすてにするの得意じゃないんだけど」

「別に構いませんが、出来ればそう呼んでもらえると嬉しいです」

 寂しそうな眼差しを見せてくるが、どういう意図のものかは分からなかった。


「……わかった。尽力してみるよ。話を戻すけど、とりあえず、そいつらには近づかない方が良さそうだね。……でも、王都には一度行ってみたいかな」

 観光目的でそんなことを呟いたら、雰囲気が一気に悪くなった。

 尽力する、と俺が言った時には、人のいい笑みをこちらに向けていたシルヴィさんも、その顔に陰りを見せた。


「……お前さんは本当に何も知らないんじゃな。シルヴィを見てもなんとも思わんみたいじゃし」

 婆さんの言葉にシルヴィさんの方を見るが、シルヴィさんは先程よりも辛そうな瞳をこちらに向けていた。

 う~ん、シルヴィさんに関しては可愛らしくて優しい少女だとは思うけどね。


「ふっ……やめじゃやめ。全員弓を下ろしな!」

 その掛け声を婆さんが発すると、周りの木から、男が数人降りてきた。


 いきなり現れた男たちに、俺は驚きを隠せなかった。

 何よりもその手に持っているものが、殺伐としていて、恐怖で硬直してしまう。

 彼らの手には、弓が握られており、40代くらいの男性たちは、俺を睨むと舌打ちして、婆さんを不満そうな顔で見た。


「なんで止めるんじゃ! ここで殺す予定じゃったろうが!」

 男たちの中で髭の生えた貫禄のあるおっさんが婆さんに詰め寄る。

 ……えっと、殺すってもしかして俺のこと?


「もう良い。この者はどうやら本当に知らんようじゃ」

「あんな根拠もない話を、あんたは信じるのか⁉️」

「ふむ、根拠か……根拠ならあるぞ。わしの勘じゃ」

「はあ? そんなんであいつを信じるってのか?」

「70年間生きてきたわしの勘が、この男は信用する価値があると見出だした。疑いだけで殺すなんてもったいないわ」


 二人の会話についていけない俺のもとに、申し訳なさそうな顔をしたシルヴィさんが近付いてきた。

「ごめんなさいユーマさん」

「……えっと、この状況説明してくれないかな? なんでこの人たち、俺に殺気向けてんの?」

「………実は私たち、あなたが王都からの刺客なんじゃないかって疑っていまして、……その………非常に言いづらいのですが、あなたを殺そうとしていました。謝って許されることじゃないのはわかっていますが……」

「いいよ別に」

「……えっ?」

「あんたらは悪くないさ。俺が間違ってたんだ。そりゃ、そうだよね。俺は素性もよくわからない人間で、君たちのテリトリーに入った余所者。そんな俺が話した内容は嘘としか思えないようなもので、こんなに怪しいと思える材料が揃ってたら、疑われたって仕方ないさ。そうだ、俺が馬鹿だっただけ。こんな見知らぬ土地で簡単に人を信用するから命を狙われるんだ。……じゃあな、俺はここから出ていくし、後は勝手にしてくれ。これであんたらも文句ないだろ?」 

「待ちなっ!」


 その場から立ち去ろうとした時、さっきまでおっさん共ともめていた婆さんが俺を呼び止めた。

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