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「なんでシェスカの分は買ってくれなかったの!!」
店の外へと出ると我慢していたシェスカが優真の方に膨らませた頬を向けた。
「そんなこと言ったってな~……あそこの店変なものばかり置いてあった癖に、子ども服は無かったんだよなぁ」
「しょうがないですよ。シェスカくらいの子は服屋に行こうなんて思いもしませんし……5才未満の子どもの衣服は国が提供してくれますから衣服店に置く必要がないんです」
「なるほどなぁ……まぁ……この国がそういうところだってのは知ってるけど……それにしたってシェスカに服を買ってやれなかったのは残念だったな……まぁシェスカには後でなんか買ってあげるからさ……それで許してくれないか?」
店の前から断固として動こうとしない姿勢を見せるシェスカ。幼い少女をこんな場所に置いていく訳にもいかず、優真はどうにかして説得を試みる。
「やだ!! お姉ちゃんにはいっぱいお洋服買ってたのに! お姉ちゃんばかりずるい!」
「……そうは言ってもなぁ……! おっ! ……ちょっとここでシェスカを見ていてくれないか?」
「え? ……ええ……別に構いませんが……大丈夫なのですか?」
「すぐすむと思うから大丈夫だ。あまり遠くにも行かないし……俺が来るまで絶対にここを動くなよ?」
不安そうな顔をするシルヴィにそう言った優真は近くの店に入っていった。
シルヴィとシェスカが数分程待つと、優真が店から出てくるのが見えた。
「悪い……選ぶのに手間取った」
そう言った優真は二人から左手を隠すようにやって来ていた。
「シェスカには本当に感謝してるんだ。なんてったってシェスカがいなかったら、シルヴィを見つけられなかったんだからな。だからこれは、俺からのささやかなお礼なんだ」
優真は隠していた左手をシェスカの前につきだす。そこに握られていたのは何かが入った大きめの袋だった。
それを見た瞬間、シェスカの目が爛々と輝き始める。
「これ開けていいの!!」
「もちろん」
優真がそう答えるとシェスカは乱雑に袋を開け始め、その袋からうさぎのぬいぐるみを取り出した。
「やった~うさぎさんだ~!! お兄ちゃん大好き~!!」
屈んでいる優真の首に抱きついたシェスカ。
シェスカは優真から離れるともらったぬいぐるみを嬉しそうな表情で抱きしめた。




