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シルヴィが作ってくれた晩御飯を食べながら、俺達は今後のことについて話し合うことにした。
「それで……これからのことなんだけど……まずはどうにかしてこの国から脱出したいところだな。一応信じてはいるが、噂が広まるのも時間の問題だろう。それに一時はギルドに顔を出すのも控えようと思う」
その話を真剣な顔で聞いてくれているシルヴィとまったく話に関心を示さないシェスカを視界に入れながら話す。
ちなみにお金の額は言わなかった。
しばらく不自由なく暮らしていける程の金を稼いだとしか伝えなかった。
金は人を変えるというし……いや、信じてない訳じゃないけど……絶対に言わなくてはならない時以外は黙ってることにした。
「それでしたら、明日は1日お暇ということですか?」
「うん……まぁ、そういうことになるかな。なんか手伝ってほしいことがあるならなんでも言ってくれていいよ。買い物だって何か欲しいものがあるなら買ってくるし……」
確かに最近はタイラントグリズリーの討伐に勤しんでいたから、二人に構ってあげられていなかったことを思いだし、たまには家族サービス的なのをやるのもいいかと思い、そう聞いてみると、シルヴィは首を横に振った。
「私……外で遊びたいです! ユーマさんと一緒に買い物したり、お食事に行けたら嬉しいです!」
「……いやでも……」
彼女が行きたいというなら俺だって大歓迎だ。
なにせそれはデートのようなものだからだ。
彼女とは一度もデートなんてしたことなかったから、本音ではめちゃくちゃ行きたい!
……だが同時にリスクが高過ぎる。
聖域に行ったあの日以降、シルヴィとシェスカを一度も外出させていない。それは、シルヴィの存在が明るみに出たら、第二のベラキファスが現れるからだ。
それはなんとしても避けたい。
またシルベスタさんのような犠牲を出さないためにも……今度こそミスは許されない。
「そ……そうですよね。私は本来ならわがままを言える立場じゃないんですよね。……すいません……変なことを言ってしまいました。さっきのは忘れてください……」
シルヴィはそう言ったものの、そんなあからさまに落ち込まれては無理なんて言えるはずがない。
「…………絶対俺から離れないことと、俺の指示には絶対従うことを誓ってくれるなら…………考えなくもない」
その言葉を聞いた瞬間、シルヴィが目を見開いてこちらを見てきた。
「い……いいんですか?」
「あ……ああ、もしもの時が起こっても今度こそ俺が守ると約束するから、明日、近くの商店街にでも行くか」
その瞬間、シルヴィの顔が喜びに満ち溢れた。
「ありがとうございますユーマさん!」
こうして俺は、彼女と初デートの約束を取り付けた。
◆ ◆ ◆
「…………だよね……知ってた……」
雲一つない晴れ渡る青空の下、意気揚々としていたはずの優真はそんな言葉を呟いた。
「どうかしました?」
そんな優真の変化に気がついたシルヴィはそう声をかけた。
その隣にいる幼い少女も姉と同じように心配するような視線を優真に向ける。
「お兄ちゃん元気ないの? お出掛けだめ~?」
「いや……そんなことないよ。今日はお外にお出掛けするんだから、この前買った麦わら帽子はちゃんとつけとこうな。太陽さんに怒られるからね」
「そうだった! シェスカちょっとお帽子さん取ってくるね!」
そう言って忙しない様子で家の中に戻った少女を笑顔で見送りながら、心の中でため息をつく。
(このまま出発する……なんて俺に出来る訳ないか……案外こういうところなのかもな……後一歩が踏み込めないのも……)
そんなことを思いつつ、シルヴィと談笑しながら、帽子を取りに行ったシェスカを待った。
数分後にはうきうき気分のシェスカが戻ってくる。
「楽しみだねお姉ちゃん! シェスカ初めてお姉ちゃんと買い物するから今日がたのしみだったんだ~」
そんなことを満面の笑みで言う少女を自分の身勝手で置いていくなんて悪魔のようなことが俺に出来るはずもなく、結局3人で買い物に行くこととなった。




