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14-2


 そういう訳で、この冒険者ギルドで生計を立てていくことにしたのだが、……さっそくやらかしてしまったようだ。


 事の発端は3日前、冒険者ギルドで簡単な依頼をこなしてランクを上げながら報酬を得るという基本に忠実なやり方をしていると、B級冒険者だけで組まれたパーティーが一匹のタイラントグリズリーによって壊滅したという話がまいこんできた。

 無視をする予定ではあったが、子ども達が多く働いている辺りに現れるため、子どもの被害が今も増えているという話を聞いたら放っておく訳にもいかなかった。

 A級以上でなければ受けられないようになった依頼ではあるが、俺がアイテムボックスからタイラントグリズリーを数匹取り出して査定を頼むと言った瞬間、ギルド長から直接依頼されたのだ。

 それから3日間、ペゲマル(やつ)がいるという山へと出かけ、適当に散策して襲いかかってきたタイラントグリズリーを狩り続ける。

 その度にこいつじゃないと文句を言われ続け、ようやく当たりを見つけたのだった。

 いやはや、実際見つけた時はその巨体に驚いたのなんのって……今まで会った他のタイラントグリズリー達が弱そうに見えてくる。


「ありがとうございます! あなたのお陰で町の脅威がまた一つなりました。誠にありがとうございます! それからこれを!」

 奥から出てきた小太りのおっさんことギルド長は俺の手を握って激しく上下させる。

 感謝の言葉と共に、他の職員が持ってきたアタッシュケース5つを俺の前に置き始めた。

「…………これは?」

「お礼金と査定の代金です。一つにつき、1億アーグ入っておりますので、合計5億オーグになります」

 その単語には騒いでいる全員が唖然とした顔になる。当然俺も例外ではなかった。

 それはそうだろう。アーグの単位は日本円と変わらない為、これは日本で言う5億円だ。そんな大金をB級以下の冒険者達がお目にかかれる機会なんてほとんどないだろう。

 普通の人間なら一生遊んで暮らせる金額だった。


「……さすがに多くありませんか?」

「そんなことはありません! 本来タイラントグリズリーはその獰猛な性格のせいで近付こうという人間もいないため、素材がほとんど無いのです。鋭く硬い牙や爪は武器の材料にもうってつけで、その柔らかい毛皮は最高級の素材として扱われます。ましてや、基本的な倒し方が毒を盛るという方法のため、その肉は最高級の品であるにも関わらず、出回ることがなかなかありません。取り扱う店からしたら、安全な肉が手に入っていいこと尽くし。これまでの40頭を1頭1000万と換算し、達成報酬の5000万とこのペゲマル(素材)だけで5000万になります」

 目を輝かせながら言ってくるギルド長に若干ひきつつ、そういうことならとアタッシュケースを全てアイテムボックスにしまった。


「まぁ……達成報酬はこれだけじゃないですがね。アマミヤ様冒険者カードを提示いただけますかな?」

 その言葉に疑問を抱きつつ、冒険者カードを提示するとギルド長は俺の冒険者カードを持って裏に行ってしまった。

 しばらくして「お待たせいたしました」と言いながら戻ってきたギルド長は、俺に冒険者カードを渡す。

 その冒険者カードの左上にはBの文字が刻まれてあった。

「おい……これはさすがにおかしいだろ! なんでE級になったばかりの俺がB級なんだよ!!」

「A級の依頼をこなした方を底辺に置いておくなんてできません! なんなら今すぐにでもA級に上げたいくらいだったので簡単なクエストを受ければ、A級に上がれるようにしておきました!」

 気を回したつもりなのだろうが、俺からしてみればいい迷惑だ。これじゃあ前回の過ちを繰り返すだけじゃないか。

「なぁギルド長……今回の件は箝口令を敷いてくれないか?」

「はて? 何故でしょう?」

「タイラントグリズリーをE級が一人で狩ったとなれば入ったばかりの馬鹿が真似してしまうかもしれないだろ? それが俺のせいにされたらたまったもんじゃない。国の連中にも絶対言うなよ?」


 少し威圧的に言った優真はギルド長が返事をする前に入り口へと向かって、外へと出た。


 そして、その優真をついていく影があった。

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